民事執行②~預貯金の差押え②

Q. 私(A)は、Bさんに100万円を貸していましたが、返済期限を過ぎても返してくれませんでした。
仕方ないので、先日裁判を起こし、判決で、私のBさんに対する100万円の請求が認められ、確定しました。
しかし、その後もBさんは一向にお金を払ってくれません。
BさんにはX銀行に預金があるようなのですが、そこからお金を払ってもらうことはできますか?

 

 

A. 前回に引き続き、預貯金に対する差押手続についてご説明します。

→前回の記事はこちら(民事執行①~預貯金の差し押さえ①)

今回は、預貯金差押手続の流れについてご説明します。

 

前回と同じく、ご説明の前に用語の整理をしておきましょう。

債権者=Aさん

債務者=Bさん

第三債務者=X銀行

請求債権=請求している債権のこと。今回のQでは、AさんのBさんに対する100万円の貸金返還請求権。

差押債権=差し押える対象の債権のこと。今回のQでは、BさんのX銀行に対する預金債権のこと。

 

 

 

 

 

 

3 預貯金差押手続の流れ

⑴-1 債権差押の申立書を裁判所に提出

申立書には、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録を別紙として添付するのが通常です。

請求債権目録とは、請求債権の詳細(執行手続に要した費用も請求できます)を記載した書面で、どのような債務名義に基づく請求かについても、ここに記載するのが通常です。
差押債権目録とは、差押債権の詳細を記載した書面のことです。預貯金の場合、原則として、金融機関名と支店名を特定して記載する必要があります。

また、前回の記事でご説明したとおり、申立書には、債務名義と執行文、送達証明書等も添付する必要があります。

 

⑴-2 ⑴-1と同時に、第三債務者に対する陳述催告の申立書を裁判所に提出

陳述催告の申立書とは、第三債務者に、差押えの対象となる債権があるかどうか、その種類、額等について、2週間以内に書面で陳述するよう催告する書類です。

この申立書が届くと、多くの第三債務者、今回で言えば金融機関は、●●銀行●●支店に債務者の普通預金が●円あります、その普通預金に他の差押はありません、等の回答をしてくれます。

この陳述催告の申立書は、法律上は提出が必須ではない(申立が必須ではない)ようですが、実務上は、ほとんどのケースで申立をしていると思います

 

⑵ 差押命令発令→第三債務者と債務者に送達

裁判所の判断を経て、差押命令が発令されます。
差押命令が発令されると、第三債務者に送達されます。この時、あわせて、債権者が上記3⑴-2で申し立てていた陳述の催告も行われます(陳述書の書式が第三債務者に送付されるようです)。

差押命令が第三債務者に送達されると、差押えの効力が発生します。第三債務者は債務者に弁済することが禁止され、債務者も債権の取り立て、預貯金で言えば引き出しが禁止されます。

また、差押命令は債務者にも送達されます。

 

⑶ 金融機関から、陳述催告の申立に回答する陳述書が裁判所に提出される

 

⑷ 預金の取り立て

差押命令が債務者に送達されてから1週間が経過すると、債権者は預金を自ら取り立てることができます。

取り立てに成功すると、請求債権(と執行費用)は、取り立てた額の限度で弁済されたものとみなされます。

なお、取り立て後も、取立届の提出等、いくつかの書類の提出が必要です。

 

 

以上が一般的な預貯金差押えの流れです(※1)。

同じ預貯金に、他の差押えもされている等の場合には、以上と少し異なる手続になりますので、詳しくは弁護士にご相談頂ければと思います。

 

(※1:その他、金銭債権に対する執行の方法として、転付命令という制度もあります。)

 

 

関連記事一覧

民事執行①~預貯金の差押え① →こちら

民事執行②~預貯金の差押え② →本記事

 

民事執行①~預貯金の差押え①

Q. 私(A)は、Bさんに100万円を貸していましたが、返済期限を過ぎても返してくれませんでした。
仕方ないので、先日裁判を起こし、判決で、私のBさんに対する100万円の請求が認められ、確定しました。
しかし、その後もBさんは一向にお金を払ってくれません。
BさんにはX銀行に預金があるようなのですが、そこからお金を払ってもらうことはできますか?

 

 

A. 預金に対して差押手続を行いましょう。

 

預貯金は、金融機関に対する債権ですので、これを取り立てるには、裁判所で債権執行手続を行う必要があります。

債権執行手続とは、債務者が第三者に対して有する債権を差し押さえ、これを場合によっては換価し、債務の弁済に充てる手続です。


預貯金に対する差押えは、回収が比較的容易なこともあり、頻繁に使われる手続です。

今回・次回と2回にわたり、この預貯金に対する差押手続についてご説明します
今回は、手続の必要書類と要件について。

 

ご説明の前に用語の整理をしておきましょう。

債権者=Aさん

債務者=Bさん

第三債務者=X銀行

請求債権=請求している債権のこと。今回のQでは、AさんのBさんに対する100万円の貸金返還請求権。

差押債権=差し押える対象の債権のこと。今回のQでは、BさんのX銀行に対する預金債権のこと。

 

 

 

 

 

 

1 主な必要書類

必要となる書類は、事案によって若干異なります。以下では、多くのケースで必要となる主な書類についてご説明します。

 

⑴ 債務名義

説明しようとすると難しいのですが、なるべく簡単に言うと、権利が存在することとその範囲を公証する文書のことです。

今回のQで言えば、AさんのBさんに対する100万円の貸金返還請求権が存在することを公証する文書を指します。

 

どのような文書が債務名義として認められるかは法律で定められており、

裁判所の判決(確定したものや仮執行宣言が付いたもの)や、

裁判上の和解における和解調書

執行受諾文言の付いた公正証書(※内容には制限があります) 

が債務名義として認められています。

今回は、判決が確定しているので、100万円の貸金返還請求権を認める判決とそれが確定したことを示す確定証明書が、債務名義として必要になります。

 

⑵ 執行文

これも説明しようとすると難しいのですが、債務名義について、執行できるだけの効力が現に存在することを公証する文書のことです。

執行を行うためには、原則として執行文が必要であり、申立書を提出し、執行文の付与を受けることになります。

執行文には、大まかに、①単純執行文、②条件成就執行文、③承継執行文の3種類があります。

どの執行文が必要になるかは、事案によって異なります。

 

⑶ 債務名義(と執行文)の送達証明書

詳しくは以下2⑵でご説明しますが、原則として、債務名義(と執行文)の送達証明書も必要になります。

 

⑷ その他

⑴~⑶が主な必要書類ですが、他にも、たとえば、会社であれば資格証明書など、いくつか書類が必要になることがあります。

 

 

2 主な要件

⑴ 必要書類を準備して、裁判所に申立をすること


⑵ 債務名義(と執行文)の送達

原則として、債務名義または確定することで債務名義となる裁判の正本または謄本が、事前に、あるいは執行開始と同時に、債務者に送達されていることが必要です。

今回のQのような裁判の判決の場合、裁判手続の中で債務者に送達されますので、別途送達をする必要はありません。
しかし、和解調書などは自動的には送達されませんので、送達を申請する必要があります。

また、1⑵②または③の執行文(条件成就執行文または承継執行文)が付与された時は、その執行文と、執行文を得るために債権者が提出した文書の謄本も、事前に、または執行開始と同時に、送達される必要があります。

上記1⑶でも記載したとおり、これらを送達したことが分かる送達証明書は、申立の際に添付することが必要です。


⑶ 債務名義に条件等が付されている場合、その条件等が成就していること

この条件等の成就を確認する方法として、1⑵②の条件成就執行文を得ることが必要なケースもあれば、そこまでは必要なく、執行を申し立てる際に条件等の成就が確認できれば良いケースもあります。
いずれに該当するかは弁護士にご相談頂ければと思います。

執行申立の際に条件等の成就が確認できれば良いケースでは、申立の際に、条件等の成就が確認できる資料を添付する必要があります。

 

 

以上が、預金に対する差押手続の主な必要書類と要件です。

次回は、預金差押手続の流れについてご説明します。

 

災害による住宅被害への対応②~義援金・生活再建支援金等

Q. 大雨で住宅に被害を受けました。このように災害で住宅に被害を受けた場合、何か資金援助を受けられる制度があるのでしょうか?

 

 

A. 前回(こちら「災害による住宅被害への対応①~応急修理の制度」を参照)に引き続き、災害で住宅に被害を受けた際に利用可能な制度についてです。

前回の記事でも記載しましたが、前回・今回とご説明するお金の給付を受けられる制度以外にも、借入れを受けられる制度、減免を受けられる制度等が存在します(いずれも要件はあります)。今後、新たな制度ができたり、制度が改正されたりする可能性もあります

ですので、気兼ねすることなく、都度、弁護士会の電話相談等でご相談頂ければと思います。

さて、今日は、前回ご説明した応急修理以外で、お金の給付を受けられる制度についてご説明します。


2 保険金

加入している保険で保険金が受け取れるものがないか、確認しましょう。
ご家族が入っている保険で保険金が受け取れることもありますので、全ての保険を確認して下さい。

 

3 義援金

簡単に言えば、被災者支援などのために集められる寄付金のことで、集まった寄付金が被災者に配分されます。
災害の規模等によっても異なりますが、数回に分けて配分されることが多いようです。

 

4 被災者生活再建支援金

⑴ 対象となる災害

被災者生活再建支援法の適用が発表された災害が対象です。前回ご紹介した災害救助法とは適用地域が異なる場合があるため注意が必要です。

*令和3年8月11日からの大雨災害では、広島県下の市町村が被災者生活再建支援法の適用対象となるかは、まだはっきりしません(令和3年9月5日時点)。適用対象となるか否か、引き続き、国や自治体からの情報を確認する必要があります。


⑵ 対象となる住家

⑴の災害により

①住宅が「全壊」した世帯

②住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯(補修費用があまりにも高額の場合など)

災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯

④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯

⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯(中規模半壊世帯

*被災時に現に居住していた世帯が対象です。


⑶ 支給額等

支給される金銭には、(ア)基礎支援金と、(イ)加算支援金の2種類があります。

(ア)基礎支援金=住宅の被害の程度に応じて支払われる金銭

・⑵①~③の場合→100万円
・⑵④の場合  → 50万円
・⑵⑤の場合  → 支給なし

(イ)加算支援金=住家の再建方法に応じて支払われる金銭です。

・住宅の再建方法が建設・購入の場合

 ・⑵①~④→200万円
 ・⑵⑤  →100万円

・住宅の再建方法が補修の場合

 ・⑵①~④→100万円
 ・⑵⑤  → 50万円

・住宅の再建方法が賃貸(公営住宅を除く)の場合

 ・⑵①~④→ 50万円
 ・⑵⑤  → 25万円

*世帯人数が1人の場合は、基礎支援金、加算支援金ともに、それぞれ3/4の額となります。


⑷ 注意点

①基礎支援金、加算支援金ともに、申請主義で、申請期限もありますので、自治体のホームページを確認するなどして、忘れずに申請するようにしましょう。

適用対象になるかの判断は難しい部分もあります(特に⑵②③など)。事前に自治体に相談するようにしましょう

加算支援金は、「賃貸(公営住宅を除く)」とあるとおり、災害公営住宅等への入居は対象となりません
(一時的に災害公営住宅等に入居しており、その後、住宅を新築・購入、修繕、賃貸した場合については、新たに加算支援金を申請できると明確に記載している自治体もあれば、明確に記載のない自治体もありました。事前に自治体に確認頂ければと思います。)

加算支援金を受け取ると、災害公営住宅等の入居資格を失う場合がありますのでご注意下さい。事前に自治体に確認するようにして下さい。

 

5 その他上乗せ支援

以上ご紹介した以外にも、自治体ごとに上乗せ支援制度が存在することがあります。また、災害ごとに新たな支援制度ができたり、特別の上乗せ支援制度を自治体が定めることもあります。
都度、自治体のホームページを確認したり、自治体の窓口に問い合わせるなどして、確認することが重要です。

災害による住宅被害への対応①~応急修理の制度

Q. 大雨で住宅に被害を受けました。このように災害で住宅に被害を受けた場合、何か資金援助を受けられる制度があるのでしょうか?

 

 

A. 災害で被害を受けたけれど、どうして良いか分からない・・・初めて災害を経験する方には当然の感想です。

今回・次回は、災害で住宅に被害を受けた場合を想定して、現時点でどういった利用可能な制度があるのか、簡単にご説明してみたいと思います。


なお、利用可能な制度には、お金の給付を受けられる制度の他、借入れを受けられる制度(元金据置期間を設定できたり、高齢者向けの返済特例のあるもの等)もありますし、ローンの減免が受けられたり、税金等の減免措置が実施されることもあります

今回、次回の記事では、お金の給付を受けられる制度についてご説明しますが、その他にも、状況に応じて色々な制度が設けられていますので(今後新たな制度ができることもあり得ます。)、一度弁護士にご相談頂ければと思います。


特に、大きな災害の場合には、弁護士会に無料の電話相談等が設けられたりします(令和3年8月11日からの大雨災害でも設けられています)。
ですので、弁護士会のホームページをご覧頂き、気兼ねなくご相談頂ければと思います


では、本題に入りましょう。
今日は、応急修理の制度についてご説明します(具体的な運用は災害によって変わり得ます。都度、弁護士にご相談頂ければと思います。)。

 

1 応急修理

⑴ 制度概要

日常生活に必要な最小限度の部分の補修を行うことで、被災者がその住宅に居住できるようにする制度です。


⑵ 対象となる地域

災害救助法が適用された地域です。
令和3年8月11日からの大雨災害では、広島県内では、広島市(全区)、三次市、安芸高田市、山県郡北広島町が災害救助法の適用対象となっています(令和3年9月2日時点)。


⑶ 対象者

①住家が半壊もしくは準半壊の被害を受け、自らの資力では応急修理をすることができない者(中規模半壊含む)

②大規模な補修を行わなければ居住することが困難な程度に住家が半壊した者(大規模半壊)

*全壊の場合でも応急修理をすることで居住が可能という場合は、個別に対象とすることが可能です。もっとも自治体によって扱いが異なるとも聞きますので、まずは自治体に相談しましょう。


⑷ 支給額等

応急修理は、日常生活に必要欠くことのできない部分で、緊急に応急修理を行うことが適当な箇所について実施するとされています(具体的な範囲については事前に自治体に確認しましょう)。

1世帯あたり以下の額とされています(ただし、同じ住家に2以上の世帯が居住している場合には、1世帯当たりの額以内とすることが原則とされています)。

半壊以上:上限59万5000円
準半壊:上限30万円

いずれも上乗せ支援がされるケースもありますので、都度確認が必要です。


⑸ 注意点

①原則として、応急修理を利用すると応急仮設住宅等に入れなくなります
(※ただし、要件を満たせば、原則として応急修理が完了するまでの間は、仮設住宅を使用できる可能性がありますので、自治体にご確認下さい。)

したがって、応急修理を利用するかは慎重に検討すべきです(とはいえ期間制限もあり得るところですので、自治体に確認しつつ検討を行いましょう)。


②工事を始める前に、まず自治体に相談し、申請を行いましょう。

勝手に施工すると、後から費用請求することはできないのが原則です。
また、工事には、名簿に載っている業者しか利用することができませんので(他の業者を利用したい場合、追加指定を求めることは可能のようです)、必ず事前に自治体に相談し、申請等を行って下さい。


③写真を撮っておきましょう。

内閣府防災の情報ページによると(www.bousai.go.jp/oyakudachi/pdf/kyuujo_c7.pdf)、応急修理の申請には、被害状況が分かる写真等の添付が必要とされています。
写真は必ず、被害状況が分かるように、かつ、多めに撮影しておきましょう。

 

次回(こちら「災害による住宅被害への対応②~義援金・生活再建支援金等」)に続く。

調停離婚、裁判離婚が成立した場合の離婚届の提出について

Q. 先日、調停で、やっと離婚が成立しました。裁判所が離婚を認めてくれたのですから、離婚届の提出はしなくて良いですか?

 

 

A. 調停や裁判で離婚が認められた場合でも、離婚届の提出は必要です!


調停や裁判で離婚が認められる場合には、①調停や②審判で離婚が成立する場合、裁判で、③判決や④和解、⑤認諾により離婚が成立する場合が考えられますが、いずれの場合も、離婚届は提出する必要があります。これを「報告的届出」といい、具体的な手続は、概略、以下のとおりとなっています。

 

1 提出期間

離婚が成立した日から10日以内に、離婚届を提出することが必要です。期間内に届出をしないと、過料を科せられる可能性もありますので、必ず届け出るようにしましょう。


2 離婚届の形式・必要書類

調停離婚や裁判離婚の場合(報告的届出の場合)、離婚届の証人は不要です。また、相手方の署名押印も不要とされています。

提出には、調停調書の謄本、判決書の謄本と確定証明書など、必要書類がありますので、忘れずに持参しましょう。
(各市町村のホームページなどで具体的に確認できますので、事前に調べて行きましょう。)


3 提出場所

本籍地または所在地の市区町村役場(本籍地以外に提出する場合は戸籍謄本が必要)


4 届出人

原則として、調停の申立人または訴えの提起者です。
例外的に、調停条項等で、「申立人と相手方は、相手方の申出により、本日調停離婚する」と定められていれば、相手方が届け出ることができます

では、申立人と相手方、いずれが届け出るのが良いのでしょうか?

これについては、以前の記事で、離婚した場合、結婚により姓を改めた者は、原則旧姓に戻り、戸籍も結婚前の戸籍に戻ること、ただし申出により新たな戸籍を作ることもできることをご説明しました(こちら「離婚後の氏(姓)について①~離婚当事者の氏について」を参照)。
離婚に際しては、この選択・申出手続を行う必要がありますので、結婚により姓を改めた方が離婚届を提出する方がスムーズかと思います。

不起訴の種類

Q. 「不起訴処分」という言葉を耳にしたのですが、「不起訴処分」とは何ですか?

また、「不起訴」にも種類があると聞きました。具体的に教えて下さい。

 

 

A. 逮捕されると、取り調べを受けて裁判になって、有罪か無罪か決まる・・・刑事事件というとこういった流れを想像される方が多いと思います。
ですが、実際には、逮捕されても裁判にならないケースが一定数存在します。「不起訴処分」がされるケースです。
「不起訴処分」とは、起訴しない、つまり、裁判にしないという判断がなされたことを意味します

では、どのような場合に「不起訴処分」がなされるのでしょうか?
不起訴処分には20種類ものパターンがありますが、よく目にするのは以下の3種類です。


1 嫌疑なし

被疑者が犯人でないことが明白なとき、または、犯罪が成立したと認定できるだけの証拠がないことが明白なときには、「嫌疑なし」とされます。
少し分かりにくいですが、真犯人が他に見つかった場合などが典型です。


2 嫌疑不十分

被疑者に対する疑いは残るものの、証拠が不十分であるため、裁判で有罪の立証ができないと判断した場合が「嫌疑不十分」です。


3 起訴猶予

証拠もあり、検察官としては裁判で罪を問うことも可能と考えているが、諸般の事情を総合考慮して、起訴まではしないという場合、「起訴猶予」となります。
諸般の事情としては、被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況といった事情が挙げられています。
たとえば、軽微な事件で前科前歴もない場合などは、「起訴猶予」とされるケースもあります。

 


不起訴処分になれば、その時点で解放されますので、逮捕などで身体拘束を受けている被疑者からすると、身体拘束から早期に解放されるというメリットがあります。
また、不起訴処分になれば、前歴はついてしまいますが、前科はつきませんので、その点でもメリットがあります

したがって、弁護士としても、事案に応じて、不起訴処分もあり得るようなケースでは、積極的に不起訴処分を求める活動を行っていくことになります。

裁判の管轄について

Q. 私の会社A社はB社に木材(300万円)を売りましたが、代金が一切支払われていません。裁判で代金全額の支払いを求めたいのですが、どこの裁判所に裁判を起こせば良いのでしょうか?ちなみに、A社は東京、B社は大阪に本社があります。

 

 

A. 裁判に必要な書類を準備して・・・ん、どこの裁判所に裁判を起こせば良いんだろう・・・?
弁護士をしていると、慣れてくるので、こういう事態も少なくはなりますが、時に疑問を感じる事件にぶち当たることもあります。裁判の管轄の問題ですね。

今日は、どこの裁判所に裁判を起こせば良いのか、民事訴訟の管轄についてご説明したいと思います。(話が複雑になるのを防ぐため、家事事件や人事事件、行政事件、刑事事件等については今回は除いてご説明します。)

 

「管轄」といわれるものには何種類かあるのですが、メインとなるのは以下の1~3の3つです。


1 職分管轄

その事件の種類や手続によって振り分けられる管轄のことです。
たとえば、日本には、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所という5種類の裁判所がありますが、民事訴訟の第一審は、原則として地方裁判所か簡易裁判所で行うといった形での管轄です。


2 事物管轄

先程ご説明したとおり、民事訴訟の第一審は原則として地方裁判所か簡易裁判所で行われますが、そのいずれで行うのかを決めるのが事物管轄です。
訴訟物の価額が140万円以下なら簡易裁判所、それを超えると地方裁判所の管轄とされています。

問題は、この「訴訟物の価額」とは何かということですが、極めて簡単に言うと、訴えで主張する利益のことです。
たとえば、今回のQでは、請求する木材の代金の価額(300万円)ということになります。
(※「訴訟物の価額」の計算は、実際にはかなり複雑で、弁護士でも各種書籍を調べないと分からないことが多々あります。今回はこの辺りの複雑さは捨象して、極めて簡単にご説明しています。)

こういった財産権上の請求以外の請求や、価額の算定が困難なものは、訴訟物の価額は160万円とみなされ、地方裁判所の管轄となります。

なお、不動産に関する訴訟については、訴訟物の価額が140万円以下でも、地方裁判所にも管轄があります。


3 土地管轄

事物管轄まで決まったとして、さらに、どの地域の裁判所で審理するかを決めるのが土地管轄です。東京なのか、大阪なのか・・・といった話です。


まず、⑴被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所には、原則として、全ての事件で管轄が認められます
普通裁判籍とは、自然人の場合、原則として住所を指し、法人などの場合、原則として、主たる事務所又は営業所の所在地(本店所在地など)を指します。


その上で、⑵さらに、事件の種類などによって認められる管轄があります
この管轄は種類が多いですので、詳しくは民事訴訟法第5条をご参照頂ければと思います。以下に、主なものをいくつか紹介します。

【例】

①財産権上の訴え→義務履行地

*たとえば、金銭の支払の場合、金銭の支払を行うべき場所(=義務履行地)の裁判所に管轄が認められます。

 

②事務所又は営業所を有する者に対する訴えで、その事務所又は営業所における業務に関するもの→当該事務所又は営業所の所在地

 

③不法行為に関する訴え→不法行為地

 

④不動産に関する訴え→不動産所在地

*建物の明渡請求などがこれに当たります。

 

⑤相続権・遺留分に関する訴え等→相続開始時の被相続人の普通裁判籍の所在地

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の1~3の3つが管轄の主な考え方ですが、これに加えて確認すべき管轄として、以下の3つがあります。


4 専属管轄

裁判の種類によって法律が特別に定めた管轄で、これに該当すると他の裁判所には管轄が認められません。
提起しようとする裁判が専属管轄の対象になっていないかは、あらかじめ確認する必要があります。


5 合意管轄

当事者間で合意があれば、第一審に限り、法律で定められた管轄と異なる管轄に提訴できる制度です(書面等での合意であることが必要)。
契約書等がある場合、最後の方の条項に、この合意管轄条項があることが多いため、確認が必要です。


6 応訴管轄

法律で管轄が認められていない裁判所に提訴された場合でも、被告側が応訴すれば、当該裁判所に管轄が生じること。

 

 

以上6つの管轄を検討して、どこに裁判を起こすか決定することになります。


今回のQについて検討してみましょう。

まず、訴訟物の価額は300万円ですので地方裁判所の管轄となります。

その上で土地管轄ですが、まずは、5の合意管轄について確認する必要があります
合意管轄がない場合、どのように考えるかですが、被告であるB社の本社所在地は大阪ですので、3⑴によって、大阪地方裁判所に管轄が認められます
また、本件のような金銭支払債務の場合、支払は、債権者の現在の住所で行うのが民法の原則です(当事者間で別段の定めがある場合等例外はあり得ます。)。したがって、3⑵①の「義務履行地」は債権者の住所地ということになり、A社の本社所在地を管轄する東京地方裁判所にも管轄が認められることとなります。
その他、事例からは明らかでありませんが、3⑵②の管轄も検討する必要があるでしょう

 

なお、2つ以上の裁判所に管轄が認められる場合は、原告にとって有利な場所(近い場所など)で裁判を起こすことが多いです。

 

民法改正について学んでみよう⑤~売買目的物の瑕疵担保責任③

Q. 当社は家電製造会社です。一部の部品は他社から購入し、それを組み立てて家電を製造しています。
部品を購入する際、売買契約を締結しますが、その部品に不具合があった場合、当社はどのような請求ができるのでしょうか?新しい民法での制度を教えて下さい。

 

 

A. 前回までに引き続き、売買目的物の種類や品質、数量に問題があった場合に買主は何ができるか?売買目的物の瑕疵担保責任に関する民法の改正点についてのご説明です。 

第1回の記事はこちら(「民法改正について学んでみよう③~売買目的物の瑕疵担保責任について①」)

第2回の記事はこちら(「民法改正について学んでみよう④~売買目的物の瑕疵担保責任について②」)。 

今回が最終回、買主が各種請求をする際の期間制限についてです。

 

4 期間制限 

新民法下では、買主による各種請求の期間制限は、以下のとおりとなりました。

 

⑴ 種類又は品質に関して契約不適合がある場合

買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知することが必要です(売主が引き渡し時に不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときを除きます。)。
加えて、一般的な債権の消滅時効の適用もあります 

通知の内容ですが、条文からすると、不適合を通知することが必要ということになります。従前よりは買主の負担が軽減されると思われます
とはいえ、単に抽象的に不適合があったと述べるだけでは足りず、売主が契約不適合の内容を把握できる程度には不適合の具体的内容を伝えることが必要と考えられています。
買主の負担が軽減された分、早期に売主への通知を行うことを心がけるようにしましょう。

 

⑵ 数量に関する契約不適合がある場合

改正前民法下では、数量不足の場合等について、事実を知った時から1年以内等の期間制限が設けられていましたが、新民法では、数量に関して契約不適合があった場合について、期間制限は撤廃されました。一般的な債権の消滅時効によって処理されます。

 


以上が、売買目的物の瑕疵担保責任(新民法では契約不適合責任)に関する、新民法下での規律になります。

 

最後に、ここまでの連載で明示的に触れることができなかった点について補足しておきます。
改正前民法下では、瑕疵担保責任を追及できるのは、売買の「目的物」が何を指すのかについても争いがありました。特定物の場合に限られるのか、不特定物の場合も含むのかといった議論です。
新民法では、この点を整理し、特定物と不特定物を区別することなく、引き渡された物が契約に不適合の場合には、これまでご説明したような要件の下で、買主は各種請求ができることとなりました。これにより、従前に比べれば分かりやすい法制度になったと思います。

民法改正について学んでみよう④~売買目的物の瑕疵担保責任②

Q. 当社は家電製造会社です。一部の部品は他社から購入し、それを組み立てて家電を製造しています。部品を購入する際、売買契約を締結しますが、その部品に不具合があった場合、当社はどのような請求ができるのでしょうか?新しい民法での制度を教えて下さい。

 

 

A. 前回に引き続き、売買目的物の種類や品質、数量に問題があった場合に買主は何ができるか?売買目的物の瑕疵担保責任に関する民法の改正点についてのご説明です。

前回の記事は、こちら(「民法改正について学んでみよう③~売買目的物の瑕疵担保責任について①」)。

今回は、いよいよ、買主がどのような請求をすることができるかについてです。

 


3 買主はどのような請求ができるか

以下の4つの選択肢の中から、事案に応じて選択していくことになります(なお、両立しない請求にならないよう注意は必要です。)。

 

⑴ 追完請求権

買主は、引き渡された物の修補や、代替物の引き渡し、不足分の引き渡しによる、履行の追完を請求できます。要は、「ちゃんと履行してくれ」と請求できるわけです。

改正前民法下では、追完請求権が認められるかどうか、学説でも争いがありましたが、新民法では、明文で追完請求権を認めました。
ただし、契約不適合について、買主に帰責事由がないことが必要です。

 

⑵ 代金減額請求権

買主は、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます

改正前民法下では、種類や品質に関する瑕疵があった場合、代金減額請求権を認める規定はありませんでした。
新民法では、種類、品質、数量に関して契約不適合があった場合、代金減額請求ができることが明文で認められました。
ただし、
 追完請求権と同様、契約不適合について、買主に帰責事由がないことが必要です。
 原則、代金減額請求をする前提として、買主が履行の追完を催告し、その期間内に追完がないことが必要です。例外的に催告が不要な場合も定められていますが、原則は催告必要ですので注意して下さい。

 

⑶ 損害賠償請求

買主は、損害賠償の請求をすることもできます

改正前民法下では、損害賠償請求の要件・効果について、一般の債務不履行に基づく損害賠償請求の要件・効果と異なるのか等、争いがあり極めて複雑でした。
新民法では、この点を整理し、売買目的物の契約不適合の場合の損害賠償請求も、一般の債務不履行に基づく損害賠償請求と同様の規律が適用されるものとしました。
したがって、損害賠償を請求するためには売主に帰責事由が必要です。
一方、改正前民法で数量不足の一部の場合に必要とされていた買主の善意、すなわち瑕疵の存在について知らなかったという要件は不要となります(前回の2「隠れた」瑕疵要件と同様、契約内容の判断において考慮されることになると考えられます)。

 

⑷ 解除

買主は契約の解除をすることも可能です

改正前民法下では、解除についても、一般の債務不履行に基づく解除と同様に考えるべきなのか、争いがありました。
新民法では、争いがあった点を整理し、解除についても、一般の債務不履行に基づく解除と同様の規律が適用されるものとしました。
一方、改正前民法下で一部必要とされていた、瑕疵が存在するために「契約をした目的を達することができないとき」や、「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき」などの要件も不要とされました。
また、改正前民法で数量不足の一部の場合に必要とされていた買主の善意、すなわち瑕疵の存在について知らなかったという要件も不要となります(⑶と同様)。

 

 

長くなってきましたので、今日はここまで。
次回は最終回、買主が各種請求をする際の期間制限について、ご説明します。

民法改正について学んでみよう③~売買目的物の瑕疵担保責任①

Q. 当社は家電製造会社です。一部の部品は他社から購入し、それを組み立てて家電を製造しています。
部品を購入する際、売買契約を締結しますが、その部品に不具合があった場合、当社はどのような請求ができるのでしょうか?新しい民法での制度を教えて下さい。

 

 

A. 引き渡された目的物の種類や品質、数量に問題があった場合に買主は何ができるか?従前、物の瑕疵担保責任と言われていた問題です。
今回から3回にわたり、この問題についての民法の改正点をご説明したいと思います。
今日は総論的なお話を。

 

1 「瑕疵」という言葉を使わなくなりました

改正前民法では、この問題は、売買の目的物に「瑕疵」があった場合に何ができるか、という問題として論じられていました。

新民法では、「瑕疵」という言葉は使用せず、「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」、すなわち、引き渡された目的物に契約不適合がある時と整理されました。(もっとも、改正前民法でも、「瑕疵」の有無は、個々の契約内容に照らして判断すべきと考えるのが通説でしたので、用語の変更はあったものの、実質に大きな変更はないのではないかと思われます。)

 

2 「隠れた」瑕疵という要件

改正前民法下では、種類・品質における不適合において、買主が各種請求をするためには、瑕疵が「隠れた」瑕疵であることが必要とされていました(数量についてはやや異なる規定ぶりでした)。瑕疵の存在について、買主が過失なく知らなかったことが必要とされていたのです。

新民法では、この「隠れた」瑕疵要件は、独立の要件ではなくなりました(※1)。

※1:もっとも、これも、従来の要件を緩和するものではないと考えられています。この買主が知っていたかという事情は、契約内容の判断において一要素として考慮されることになります
つまり、瑕疵の存在を知っていて、それを目的物としたなら、瑕疵のあるそのものこそが契約の目的物だったということになります。したがって、目的物に契約不適合はなく、買主は何らの請求もできないこととなります。買主が知っていたかという事情は、契約の内容を判断する際に考慮すればよく、独立の要件とする必要はないというわけですね。

 

 

総論的なお話はここまで。
次回は、いよいよ、買主がどのような請求をできるかについてご説明します。

 

 

取り調べで注意すべき事項

Q. 夫が逮捕されました。突然のことで、本人もかなり混乱しているようです。
警察の取り調べも行われているようですが、どのようなことに注意して取り調べに臨べば良いでしょうか。

 

 

A. すぐに弁護士を呼びましょう。取り調べに臨むにあたっては、以下の①~③の3点を理解しておくことがまず重要です。

 


警察に逮捕されてしまったという場合、何より大事なのは、すぐに弁護士を呼ぶことです。
この場合、当番弁護士の出動を要請することができます

当番弁護士は、被疑者に認められている権利や今後の流れ等について説明してくれます。
事案にもよりますが、家族に連絡等をしてもらうことも可能です。
また、立会人を置くことなく面会ができますので、今後取り調べにどう対応すれば良いか等、周りの目を気にすることなく相談することができます。
当番弁護士の役割について、詳しくは、以前の記事「当番弁護士ってなに?」をご参照下さい。

また、逮捕後、勾留されると、被疑者国選弁護人を付けることが可能です(もちろん、費用に問題がなければ私選弁護人を付けても構いません。)。
当番弁護士は原則1回限りの出動ですが、弁護人が付けば、継続的に相談したりアドバイスを受けたりできます。
その他、事案に応じて、被害者への対応や家族への対応なども行ってくれます。

 

このように、逮捕された場合には、弁護士を呼ぶ(付ける)ことが何より重要ですが、それに加えて、被疑者として取り調べを受けるに当たっては、以下の3点を理解しておいて頂きたいと思います。


①黙秘権が認められていること

取り調べに対して、言いたくないことは言わなくて良い権利です。
ずっと黙っていても構いません。


②調書に虚偽が記載されないようにすること

取り調べの最後に、多くの場合、供述調書が作成されます。
警察官や検察官が供述調書を作成すると、通常、その内容について読み聞かせされ、最後に署名指印を求められます。
この時、事実と違うことが書かれていたり、ニュアンスが違うといったようなことがあれば、必ずその点を指摘し、訂正を求めて下さい
訂正に応じてくれない場合や納得がいかない場合には、署名指印を拒否することができます

事実と異なるにもかかわらず、訂正することなく署名指印などをしてしまうと、その後の裁判で、なぜ事実でないのに署名指印したのか等も争わねばならず、大変になってしまいます。
ですので、この点は是非ともご注意頂ければと思います。

 

③警察官などからの不当な取り調べがあった場合は、すぐに弁護士に伝えること

最近は少なくなっていると信じていますが、万が一警察官等から不当な取り調べがあった場合についてです。
不当な取り調べを受けても虚偽の自白はしないこと、これが何より重要です。そしてすぐに弁護士に伝えること弁護士から、取り調べについて記録するノートのようなものを渡されている場合には、そこにも詳細に記録しておきましょう。
その上で、今後の取り調べへの対応について、弁護士と相談しましょう。

 

この3点が、取り調べを受けるに当たって最低限心得ておくべき事項となります。
まずは弁護士を呼び、弁護士のアドバイスを受けながら、取り調べ対応等をしていくことが大事です。

民法改正について学んでみよう②~法定利率の変更

Q. 私の会社は車の部品を製造・販売しています。部品を販売する際には、都度、売買契約を締結しています。
これまで、売買契約書では、代金支払が遅れた場合の遅延損害金の利率について特に定めをしていませんでした。
民法が改正されたと聞きましたが、今後もこのままの契約で問題ないでしょうか?

 

 

. 契約書に遅延損害金の利率についての特約を定めるか、検討する必要があります

 

ご質問の遅延損害金の利率等は、契約等で別段の定めがない場合、民法における法定利率によります。
この法定利率ですが、改正前民法では、年5%の固定利率とされていました。また、年6%の商事法定利率というものも存在しました


この利率を聞いて皆様はどう思われますか?「高い!」と思われる方がほとんどではないでしょうか。
それも当然。この法定利率は、改正前民法が制定された当時の市中の状況によって定められたものでした。そのため、今となっては高すぎる状態になっていたのです。


そこで、新民法では、法定利率を年3%に引き下げました。年6%の商事法定利率も廃止されています。
また、今後も市中の状況は変わり得ます。その度に民法を改正していたのでは機動的な対処ができません。
そこで、3年ごとの変動制を採用しました。簡単に言うと、3年ごとに市中の状況を見て、必要に応じて利率を変動させる仕組みです。この利率変動の基準や計算方法も法律で定められました。

 


たとえば、貸金の利息を計算する場合を考えてみましょう。

契約等で別段の定めがない場合、貸金の利息は法定利率によって定まります。
新民法では、以下のように規定されました。

「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。」

 

 

貸金債権の場合、金銭を借主が受け取った日から利息が生じるのが原則です。したがって、「利息が生じた最初の時点」とは、原則として、金銭を交付された時と考えることになります。
金銭を交付された時の法定利率によって、利息が定まることになるわけです。

 


この他に、法定利率が利用される典型的な場合として、遅延損害金の利率算定があります。ご質問の代金支払が遅れた場合の遅延損害金の利率等が典型例です。

この場合について、新民法では、以下のように規定されました。

「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」

 

 

 
つまり、遅延損害金については、債務者が履行遅滞になった時の法定利率によって、利率が定まります。
ご質問の代金支払債務の場合、約定の代金支払期日を経過すると履行遅滞となりますので、代金支払期日の翌日の法定利率によることとなるケースが多いでしょう。

 


以上のように、新民法では、特段の定めをしないと、利率が、従来の5%や6%より低くなってしまいます。
従来どおり、5%や6%の利率にしたいといった希望がある場合は、その旨、契約書等で定めておく必要がありますので、くれぐれもご注意頂ければと思います

 

内容証明郵便とは?その効果について

Q. 妻が不倫をしていることが分かりました。相手の男性に、慰謝料請求をしたいと思っています。
最初に内容証明郵便を出すことが多いと聞いたのですが、そもそも、内容証明郵便とは何ですか?

 

 

A. 内容証明郵便とは、①誰が、②誰に対して、③どのような内容の郵便を出したかを郵便局が証明してくれる制度です。郵便局(※1)で差し出す方法と、e内容証明という、インターネットで発送を依頼できるサービスがあります。

文書の作成方法等については、いくつか制限が設けられていますので、郵便局のホームページなどで確認して作成する必要があります。図面等を同封することができないといった制限もありますので、注意が必要です。


弁護士が内容証明郵便を利用する際は、配達証明を付けることが多いです。
配達証明とは、配達した事実を郵便局が証明してくれるサービスで、配達した年月日等が記載された配達証明書を受け取ることができます。

 

内容証明郵便(特に配達証明付き)の効果としては、以下の点が挙げられます。


①  どのような内容の文書を送ったか証明することができる。いつ届いたかも確定できる。

配達証明付きの内容証明郵便にすることで、どのような内容の文書を送ったか、その文書がいつ到達したかを、証明することができます。
金銭の支払請求や、賃貸借契約の解除など、何らかの意思表示を確実に到達させたい時に、特にメリットがあります

 

②  強い意思を表すことができる

一般に、内容証明郵便は、差出人の強い意思を表すものと言われます。
口頭やメール、FAX、さらに言えば一般郵便もあるのに、あえて内容証明郵便を選択して差し出しているという点で、差出人の本気が表われていることが多いと言えます。
これが、弁護士名で、弁護士事務所の住所や事務所名の記載された文書で送られてくると、受け取った側も「向こうは本気だな」とか「マズイかな」と思うことが多いようです。

 

 

(※1:差し出すことのできる郵便局が限定されていますので、事前に確認する必要があります。)

勾留の要件

Q. 25歳の弟が逮捕されました。今後、「勾留」されるかもしれないと言われたのですが、どのような場合に「勾留」されるのでしょうか?

 

 

A. 成人の刑事被疑者について、身体を拘束する「勾留」をするためには、法律上、以下の4つの要件を満たしている必要があります
30万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪等についてはより厳しい要件となっています。)

 

1 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること

2 以下①~③のいずれかに該当すること

①住居不定

=定まった住居を有していないこと

②罪証隠滅のおそれがあること(罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること)

=証拠を隠滅するおそれがあること

③逃亡のおそれがあること(逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること)

3 勾留の必要性があること

=身体を拘束する必要性と、勾留することによって被疑者が被る不利益の比較衡量で決まることがほとんど

4 逮捕が先行していること(逮捕前置主義)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が、勾留が認められるための要件になります。

勾留が認められてしまった場合、弁護士としては、事案によって、勾留に対する準抗告という手続を取って勾留を争ったり、勾留開始後に勾留の要件を満たさなくなったような場合には、勾留取消請求をして、身体拘束からの解放を目指したりします。

 

離婚後の氏(姓)について②~子どもの氏の変更について

Q. 夫と離婚することになりました。私は結婚の際、夫の姓に変更しましたが、離婚を機に旧姓に戻る予定です。私と夫の間には子どもがおり、親権は私が持つことになったのですが、この場合、子どもの姓はどうなるのでしょうか?

 

 

A. 離婚について事件処理をしている際よくある質問の一つに、(親権を取得できそうな親から)親権者が私なんですから、子どもも当然、私と同じ姓になるんですよね、というご質問があります。

これは間違いです


Q.の事例で解説しましょう。

私(結婚前の姓に戻る配偶者)をA、夫をB、子どもをXとします。
離婚によりXの親権をAが持つことになりました。Aは、離婚により旧姓に戻る予定です。


この場合、離婚しても、子どもXの姓は自動的には変わりません。離婚する前の姓、Bの姓のままです。
そのため、親権をAが取得しても、子どもは、姓の異なるAの戸籍には入れず、Bの戸籍に残ったままとなるのが原則です。
ちなみに、Aが婚姻中の氏(姓)を続称した場合でもこれは変わりません。婚氏続称した場合の姓と婚姻中に使用していた姓は、法律上は別の姓と考えられているからです。


しかしこれでは子どもが学校生活を送る上など、色々と支障が生じ得ます。子どもの姓を変更したい、自分の戸籍に入れたいという要望が出てくるのはある意味当然のことと思います。
このような場合どうすれば良いかと言うと、子の姓を変更するために、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」をする必要があります
そして、家庭裁判所の審理により変更の許可が出たら、入籍届を提出することが必要です。
これにより、子どもは以前の戸籍(Bの戸籍)から出て、Aの戸籍に入ることができるのです。

 

姓の変更は本当に面倒なのですが、離婚後の生活も見据えて、離婚前からどのような手続が必要か準備しておくことが大事です。

離婚後の氏(姓)について①~離婚当事者の氏について

Q. 夫と離婚することになりました。私は結婚の際、夫の姓に変更したのですが、離婚後、私の姓はどうなるのでしょうか?仕事の関係上、今の姓(夫の姓)をそのまま使いたいのですが・・・

 

 

A. 結婚により姓を改めた者が、離婚後どの姓を名乗るか。離婚後の生活を考える上でも重要な問題です。
今回は、この離婚後の氏(姓)についてご説明します。
なお、離婚後、子どもの姓がどうなるのかも当事者には重大な問題ですが、これについては月曜日にご説明したいと思います。


さて、離婚後の姓ですが、結婚により姓を改めた配偶者は、旧姓(結婚直前の姓)に戻るのが原則とされています。
この場合、戸籍については、結婚前の戸籍に戻るのが原則です。ただし、結婚前の戸籍がなくなっている場合や、新たな戸籍を作る旨の申出をした場合には、新たな戸籍が作られます


では、離婚後も、婚姻中に名乗っていた姓を使いたい場合はどうすれば良いのでしょうか。
この場合、離婚の日から3カ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」という届出をすることにより(婚氏続称の届出)、婚姻中に名乗っていた姓をそのまま使用することができます
この期間を過ぎてしまった場合には、家庭裁判所に氏の変更許可の申立をする方法がありますが、認められるには「やむを得ない事由」が必要とされており、必ず許可されるわけではありません。
したがって、離婚後の姓は、今後の生活もよく考えた上で、離婚から3カ月以内に決定するのが望ましいと言えるでしょう。

 

以上が、離婚当事者の氏(姓)の変動の概略となります。

離婚当事者間に子どもがいた場合にはどうなるのか、これは月曜日にご説明したいと思います。

 

月曜日に続く

刑事事件の流れ

Q. 姉が万引きで警察に逮捕されました。今、警察の留置場にいるようなのですが、今後の流れはどうなるのでしょうか?

 

 

A. 警察に逮捕された、それだけで不安ですが、これから先どうなるのかが分からないと尚更不安になるものです。
今日は、警察に逮捕された後、裁判所で判決を受けるまでの一般的な流れについてご説明したいと思います。
なお、少年事件については流れが異なりますので、今日のご説明は少年事件以外に当てはまるものとお考え頂ければと思います。

 

警察による逮捕

 ↓ 48時間以内

検察官への送致(または釈放)

 ↓ 24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)

勾留(※1)(または釈放)

 ↓

 ↓ 最大10日 

 ↓ 場合によって勾留延長されるとさらに最大10日(合計して最大20日まで)

 ↓(法律上、20日以上にすることも可能な規定がありますが、罪が限定されており、ほとんどないと考えて良いと思います)

 ↓

起訴(起訴しない場合釈放)(※2)

 ↓

 ↓ 起訴後は、要件を満たせば、裁判所により保釈が許可されることもある

 ↓

裁判期日(期日の回数は事案による。公判前整理手続があることも。)

 ↓

判決

 ↓

場合によって控訴・上告(控訴がなければ判決確定)

 

1:「勾留」とは、簡単に言えば、警察の留置場などで身体を拘束されることを意味します。

※2:「起訴」には、通常起訴のほかに、より簡易な裁判手続も用意されています。略式起訴や、起訴とともにする即決裁判手続の申立などがこれに当たります。もっとも、利用できる要件は限定されており、いずれも比較的軽微な事件で利用できる制度となっています。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が一般的な流れになります。

特に身体を拘束された場合には、上述のような時間制限もありますので、早めに弁護士に相談することが重要です。

相続法改正について学んでみよう⑤~配偶者短期居住権制度②

Q. 先日、夫が亡くなりました。生前、私と夫は、夫名義の建物に住んでいたのですが、夫の死後、とある相続人から、建物に住み続けるなら賃料を支払うように、支払わないならすぐに出て行くようにと言われてしまいました。私としては、すぐに出て行けと言われても困るのですが・・・

 

 

A. 月曜日(こちら(配偶者短期居住権制度ができた背景)を参照)に引き続き、配偶者短期居住権制度についてです。

今日は、本制度の概略をご説明したいと思います。

前提として、これからの説明における用語の確認です。

被相続人=亡くなった方

配偶者=被相続人の配偶者

 

 

 

 

 

1.配偶者短期居住権とはどんな権利?

配偶者短期居住権制度とは、極めて簡単に説明すると、
配偶者が、被相続人の死亡時に、被相続人所有の建物に無償で居住していた場合、被相続人の死後も一定の期間、原則として無償で当該建物を使用できるという制度です。

(※一口に「使用」といっても、具体的に何をして良くて何はしてはいけないのか、難しいと思います。単に居住するだけならほとんど問題ありませんが、それ以上の事案については弁護士にご相談頂ければと思います。)


2.配偶者短期居住権が成立するための要件

配偶者短期居住権が認められるための要件は、大きく分けて以下の4つです。


①「被相続人の財産に属した建物」であること

・被相続人が当該建物を所有していたことが必要です。
・配偶者と共有していた場合も含まれます。
・第三者と共有していた場合も含まれると考えられていますが、この場合は少し難しい議論がありますので、弁護士にご相談頂ければと思います。

②「相続開始の時に居住していた」こと

・生活の本拠として現に居住のために使用していたことを意味すると言われます。したがって、旅行に行っていたとか、一時的に入院していたような場合でも、生活の本拠として使用していたことに変わりないため、該当すると考えられています。

③被相続人の財産に属した建物に「無償で」居住していたこと

・一部のみ無償で使用していた場合には、その部分についてのみ配偶者短期居住権が成立し、無償で使用することができます。

④相続権のある「配偶者」であること

・内縁の配偶者は含まれません。
・欠格や廃除により相続権を失っている場合は除かれます。
・相続開始時に配偶者居住権を取得した場合も除きます(この場合、短期居住権を認める必要性がないため)。


3.配偶者短期居住権が成立する期間

配偶者短期居住権が認められる期間は次のように定められています。

⑴ 建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割すべき場合

次の①②のいずれか遅い日まで

 ①遺産分割によって建物の帰属(建物の所有者)が確定した日
 ②相続開始時から6カ月を経過する日

⑵ それ以外の場合(たとえば当該建物が他の相続人に遺贈された場合など)

その建物を取得した者が配偶者短期居住権の消滅の申し入れをした日から6カ月を経過する日まで

 

 

なお、配偶者短期居住権を取得した場合でも、その分相続分が減るといったことはないと考えられていますので、ご安心頂ければと思います。

 

以上が配偶者短期居住権の概略になります。

概略と申し上げたように、ご説明したそれぞれの点については、事案に応じて複雑な議論があります(たとえば、建物が店舗兼住宅であった場合はどうか?相続人の一人が遺産分割の成立前に遺産共有持分を譲渡してしまった場合はどうか?等々)。
それぞれの事案に応じた詳細は、弁護士にご相談頂ければと思います

相続法改正について学んでみよう④~配偶者短期居住権制度①

Q. 先日、夫が亡くなりました。生前、私は夫とともに、夫名義の建物に住んでいましたが、夫の死後、とある相続人から、建物に住み続けるなら賃料を支払うように、支払わないならすぐに出て行くようにと言われてしまいました。私としては、すぐに出て行けと言われても困るのですが・・・

 

 

A. 他の相続人から追い出されそう・・・というご相談も、時々お受けするご相談の一つです。相続人が前妻の子と後妻のような場合が多いでしょうか。
もっとも、実の親子だから起こらないというものではなく、実の親子でも、仲が険悪になれば起こり得るケースと言えます。

 

このような事例における配偶者を保護するために、民法(相続法)改正により、配偶者短期居住権という制度ができました
長くなりますので、今回と次回に分けて、この制度についてご説明したいと思います。

今回は、配偶者短期居住権制度を理解するため、本制度ができた背景=改正前民法の下での配偶者保護の状況について概観してみましょう。

前提として、これからの説明における用語の確認をしておきます。

被相続人=亡くなった方

配偶者=被相続人の配偶者

 

 

 

 

 

被相続人の生前、配偶者が被相続人とともに、被相続人所有の建物に居住していたという事例を考えてみます。
特に遺言などもない場合を想定しましょう。

 

この場合、被相続人が亡くなると、被相続人が所有していた財産は原則として全て遺産となり、相続人全員による共有状態になります。
たとえ一緒に住んでいた配偶者であっても、被相続人の死後、その建物に無料で住むことのできる権利を自動的に認められることはありません。
配偶者も高齢になっていることが多いのに、突然無料では住めないと言われても・・・これではあまりに負担が大きいという問題がありました。


民法が改正される以前、この問題は最高裁の判例によって補われていました。
相続人の一人が、被相続人の生前、被相続人から許可を得て同居していた場合には、特段の事情がない限り、被相続人の死亡後も、遺産分割で建物の所有者が確定するまでの間、当該建物を無料で使用させる合意があったと推認されるとの判断がされたのです。

 

これにより多くの配偶者は保護されることになったのですが、残った問題点もありました。
この判断はあくまで、被相続人の意思を合理的に解釈するとそのような意思(=所有者が確定するまでの間、建物を配偶者に無料で使用させる意思)のはずだという考え方に則っていたため、たとえば被相続人が明確にこれに反する意思を表明していた場合には、配偶者は保護されないという結論になりかねない問題がありました。

 

そこで、配偶者の保護をより確実に実現するため、民法(相続法)改正により創設されたのが、配偶者短期居住権の制度です

次回は、いよいよ配偶者短期居住権制度の概略についてご説明します。

破産における免責不許可事由

Q. 自己破産を検討していますが、免責を受けられない場合があると聞きました。
どのような場合に免責が許可されないのでしょうか?

 

 

A. 自己破産手続で債務の支払を免れるためには、裁判所から「免責許可決定」(めんせききょかけってい)という決定を受けることが必要です。
(免責許可決定によっても支払を免れることができない債権等もありますが、これはまた別の機会にお話ししましょう。)


具体的にどのような基準で「免責許可決定」が出るかというと、法律で、すぐには免責を許可できない事由(=「免責不許可事由」)が規定されています。
この事由のいずれにも当たらなければ、免責が許可される
わけです。
今日は、この「免責不許可事由」について見てみたいと思います。


法律では、「免責不許可事由」として、以下の11個が挙げられています(破産法第252条1項)。

①「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと」

→友人や親族に不当に安い価格で財産を譲渡している場合等が考えられます。財産目録に財産を故意に記載しないといった行為もこれに当たります

 

②「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」

→破産申立の直前にクレジットカードで物品を購入し、購入後すぐ、不当に安い価格で譲渡している場合等がこれに当たります。

 

③「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと」

いわゆる偏頗弁済はこれに当たります。支払時期でないにもかかわらず、他の債権者に対しては支払ができないと分かっていながら、ある債権者(たとえば友人知人など)にだけ支払をする場合などがこれに当たります。

 

④「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」

破産に至った原因が過剰なギャンブルや風俗店の利用、投機・投資行為等の場合等がこれに当たります。

 

⑤「破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと」

→過去1年の間に、支払えないと分かっていながら、支払えるかのように嘘をついて借入をした場合等がこれに当たります。
氏名や年齢・収入などについて嘘をついて借入れをした場合等が考えられます

 

⑥「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと」

 

⑦虚偽の債権者名簿(債権者一覧表)を提出したこと

 

⑧「破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと」

裁判所や管財人が各種の調査を行い、その過程で債務者に色々な事情を聞いたり、資料の愛知出を求めたりすることがあります。
これにはきちんと、正確に、対応しましょう。

 

⑨「不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと」

 

⑩次のいずれかの期間内に免責許可の申立があった場合

以前に破産したことがある場合、免責許可決定が確定した日から7年以内

以前に給与所得者等再生をしたことがあり、再生計画が遂行された場合、再生計画認可決定の確定の日から7年以内

・以前に小規模個人再生または給与所得者等再生をしたことがあり、その際、民事再生法第235条1項に規定する免責の決定が確定したことがある場合、当該免責の決定にかかる再生計画認可決定の確定の日から7年以内

 

⑪破産法で破産者に定められている義務に違反したこと

→たとえば、裁判所や管財人による質問・調査に対してきちんと対応しない等がこれに当たります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらのいずれにも該当しなければ、免責が許可されます。

 

では、これらに該当する場合には諦めるしかないのかというと、そんなことはありません。
法律で、この事由に該当する場合でも、裁判所の裁量により免責を許可することができると規定されているからです。
実際の実務でも、上述した免責不許可事由に該当するケースはかなり多いです。しかし、その場合でも、本人に破産に至った事情をよく考え、反省文を書いてもらい、これを提出する等により、裁量で免責が許可されることも多いです。

 

とはいえ、免責不許可決定が出ることもゼロではありませんから、あまりに放漫な生活を続けないようにご注意頂ければと思います。

離婚の際の財産分与③~財産分与の手続②

Q. 妻と離婚を考えていますが、財産分与で揉めています。
弁護士の先生にお願いした場合、財産分与はどのような手続で進むのでしょうか?

 

 

A. 前回(こちらを参照)に引き続き、財産分与の手続についてご説明します。

前回もご説明しましたが、財産分与は、離婚とのタイミングで手続が変わってきます。
具体的には、以下の2つの場合に分けられます。

①離婚と同じタイミングで財産分与もする場合

②離婚が先に成立し、その後で財産分与をする場合

 

 

 

前回(こちらを参照)は①の場合についてご説明しました。
今回は②の場合についてご説明したいと思います。

 

2 離婚が先に成立し、その後で財産分与をする場合

①のパターンに対し、稀にご相談であるのが、離婚は成立した(離婚届も提出した)ものの財産分与がまとまらず弁護士にお願いしたいというパターンです。
この場合、以下のような流れで進むのが一般的と言えるでしょう。


⑴ 交渉(裁判外での交渉)

まずは、財産分与について、相手方と裁判外で交渉を行います。

裁判手続を利用すると、申立費用など追加の費用もかかりますし、裁判期日も月1回のことが多く、終了までにかなりの時間を要することもしばしば。
ですので、まずは、交渉で話がまとまらないか、トライしてみることが多いのです。


⑵ 財産分与調停

財産分与のみが争いになっている場合、調停を経ずすぐに審判を申し立てることも可能です。
しかし、この場合、裁判所がその職権で調停に付することができるとされています(要は調停にまわすことができるわけです)。
そのため、ほとんどのケースで、調停から申し立てることが多いと思います。


⑶ 財産分与審判

財産分与調停を行っても調停が成立しない場合、自動的に財産分与審判に移行します(財産分与審判の申立があったものとみさなれます)。

審判は、当事者の主張を聞いた上で裁判官が結論を出す手続です。当事者の合意や納得が必要ない点で交渉や調停と異なります。交渉・調停を経ていることが多いため、かなりの時間がかかっていることが多いのですが、争いに対して一定の結論が出されるメリットがあります。訴訟に似ていますが、よくテレビなどで目にする厳格な雰囲気の法廷ではなく、もう少しアットホームな部屋で執り行われることが多いです。

 


以上が一般的な流れになります。

ここで注意して頂きたいのは、離婚が先に成立している場合、離婚から2年を経過すると、家庭裁判所に調停や審判を請求できなくなるという点です。
ずるずると先延ばしにしていると、財産分与を受けられなくなる可能性もありますので、お早めに弁護士に相談されることをお薦めします。

離婚の際の財産分与②~財産分与の手続①

Q. 妻と離婚を考えていますが、財産分与で揉めています。
弁護士の先生にお願いした場合、財産分与はどのような手続で進むのでしょうか?

 

 

A. 財産分与は、離婚とのタイミングで手続が変わってきます。
具体的には、以下の2つの場合に分けられます。

①離婚と同じタイミングで財産分与もする場合

②離婚が先に成立し、その後で財産分与をする場合

 

 

 

今回、次回は、この①②それぞれの場合について、どのような手続で財産分与が進むのか、ご説明したいと思います。

今回は①の場合です。

 

1 離婚と同じタイミングで財産分与もする場合

通常、ご相談やご依頼に来られる時は、財産分与に争いがあり離婚もできていないというパターンが大多数です。
この場合、一般的には、以下のような手続で進むことになります。


⑴ 交渉(裁判外での交渉)

まずは、離婚も含め、財産分与について、相手方と裁判外で交渉を行います

裁判手続を利用すると、申立費用など追加の費用もかかりますし、裁判期日も月1回のことが多く、終了までにかなりの時間を要することもしばしば。
ですので、まずは、交渉で話がまとまらないか、トライしてみることが多いのです。


⑵ 調停

交渉をしても話がまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます
離婚調停を申し立てる際、あわせて財産分与についても調停をしてくれるよう申立をすることができますので、その旨の申立をすることがほとんどだと思います。


調停も、交渉と同じ話合いの手続です。したがって、当事者の合意がなければ調停成立とはなりません。
一方、交渉と異なるのは、調停委員という第三者が間に入る点です。調停委員は、この後ご説明する訴訟を見据えた話をしてくれることも多いので、話合いがうまくまとまることもあります(もちろん、結局は話合いですから、うまく行かないことも多々ありますが。)。


⑶ 訴訟

調停でも話がまとまらない場合、訴訟を提起することになります。

訴訟は、当事者の主張を聞いた上で裁判官が結論を出す手続です。当事者の合意や納得が必要ない点で交渉や調停と異なります。交渉・調停を経ているため、かなりの時間がかかっていることが多いですが、争いに対して一定の結論が出されるメリットがあります。


離婚訴訟を提起する際、あわせて財産分与を求めることができますので、財産の分与を受ける側が離婚訴訟を提起する場合には、その中であわせて財産分与を求めることが多いでしょう。
(財産の分与をする側が離婚訴訟を提起する場合に、あわせて財産分与を求められるかは議論があります。もっとも、財産の分与をしなければならない側が分与の請求を申し立てることは稀でしょう。離婚訴訟だけ提起することがほとんどではないかと思います。)
裁判所から得た判断に納得がいかない場合は、控訴等をすることになります。

 


なお、ごく稀ではありますが、交渉や調停で離婚自体には争いがない場合、離婚だけ先に成立させることがあります。
その場合、財産分与のみが残りますので、手続としては、調停→審判と進めることが多いでしょう(財産分与だけを求める訴訟はできません)。

 

次回に続く

離婚の際の財産分与①~財産分与の原則的な考え方

Q. 妻と離婚の話が進んでいます。財産分与を求められているのですが、具体的にどのように考えれば良いのでしょうか?
基本的な考え方を教えてほしいです。

 

A. 財産分与には、次の3つの側面があると言われています。

  ①清算的財産分与

  ②扶養的財産分与

  ③慰謝料的財産分与

 

何だそれはと思われる方がほとんどだと思いますが、全てを説明すると今日のFAQが終わりません。
そこで、今日は、この中でも中心的部分を占める①の清算的財産分与にしぼって、基本をご説明したいと思います。

 

清算的財産分与とは、夫婦が協力して築いた財産を分けることを意味します。
このように一口に言っても、実際はかなり複雑です。なるべく分かりやすく、原則的な考え方をご説明すると、以下のようになります。

 

 

1 財産分与の基準時=いつの財産を分けるか?

清算的財産分与とは、「夫婦が協力して築いた財産を分けること」でした。
この意味を思い出せば、「いつの財産を分けるか?」に対する答えも自ずと導くことができます。
「夫婦の協力関係が終了したとき」が基本的な考え方になるわけです。
具体的な時期は事案によりますが、原則として別居時が多いと言えるでしょう。

なお、別居と単身赴任は違います。
単身赴任していても、夫婦が連絡を取り合いながら円満に生活している限りは協力関係があるわけで、ここでいう「別居」には当たりませんのでご注意ください。

 

2 財産分与の対象財産

これも清算的財産分与の意味を思い出せば、自ずと導くことができます。
「夫婦が協力して築いた財産」が分与の対象となるわけです。

したがって、いわゆる特有財産は分与の対象になりません
たとえば、夫婦の一方が親から相続した財産などは、原則としてこの特有財産に当たり、分与の対象にはなりません。

 

3 分与割合

分与割合は1/2が原則です。
資産形成に対する貢献の割合が1/2ずつとは言えないような場合には、4:6などもあり得ますが、かなり例外的だと感じます。

 


以上が原則的な考え方です。
もっとも、原則的と申し上げたとおり、いずれの点についても、事案に応じた例外や複雑な考慮要素があり得ます
個別の事案に応じた詳細をお知りになりたい方は、弁護士にご相談頂ければと思います。

破産に関する勘違い~破産すると戸籍に記載される?

Q. 生活苦で借金がかさみ、返済できなくなってしまいました。
自己破産も考えていますが、破産すると戸籍に記載されると聞きました。本当に記載されるのなら破産したくないのですが・・・

 

A. 自己破産しても、破産の事実が戸籍に記載されることはありません

 

これは自己破産に関するよくある勘違いの一つです。

自己破産したことは、官報には掲載されますが、戸籍や住民票に記載されることはありません。そして、通常、官報を読んでいるという人はかなり少ないです。
破産なんて恥ずかしいからしたくないという方がよくおられますが、全く知らない人にまで破産の事実が分かってしまうことは少ないですから、恥ずかしい等と尻込みせず、ご相談されてみてはと思います。

 

他にたまに耳にする勘違いに、一切の仕事ができなくなるという勘違いもあります。

たしかに、破産手続が開始すると、免責決定が確定するまで、一定の職業にはつけなくなります。しかし、一切の職業ができないわけではありません。
「破産すると仕事をやめなくてはいけないんですよね」と聞かれることがたまにありますが、それは限定的だということを知っておいて頂ければと思います。

 

以上のとおりですので、あまり心配しすぎず、まずは弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

相続法改正について学んでみよう③~自筆証書遺言保管制度ができました

Q. 自筆証書遺言を作ろうと思っています。
    法律が改正され、遺言書を保管してくれる制度ができたと聞いたのですが、どういう制度なのでしょうか?メリットはあるのでしょうか?

 

 

A. 前回のFAQこちらを参照)で自筆証書遺言の方式が緩和されたことをご説明しました。
今回は、それに引き続き、自筆証書遺言の保管制度についてご説明します。手続の詳細等まで説明すると長くなりますので、今回は簡単に概略を。

 

民法改正とともに新しくできた保管制度により、自筆証書遺言に限り、遺言者は、遺言書の保管を申請することができるようになりました

 

1 保管申請の概要は以下のとおりです。


①申請者

遺言者本人が自ら出頭し申請を行うことが必要。代理人が保管の申請を行うことはできません。

 

②申請先

原則として、遺言者の住所地、本籍地、遺言者の所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所(指定された法務局のこと)で申請を行う。

 

③遺言書の様式等

自筆証書遺言に限る。民法に適合しているほか、法務省令で定める様式に従っていること、また、無封である必要がある

 

④保管期間

→原則として遺言者の死亡日から50年。

 遺言書に関する情報も保管されるところ、それについては、原則として遺言者の死亡日から150年。

 

⑤その他

→遺言書の保管が開始されると、保管証が交付されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


保管申請は本人が行うことが必要で、遺言者の本人確認も行われますので、その遺言書を本当に本人が書いたのかといった紛争は、以前より防止しやすくなるのではないでしょうか。

 

 

2 保管されている遺言書は以下の方法により確認することができます。

 

(1)遺言者の生存中

 遺言者のみが、遺言書の閲覧や遺言書に関する情報を閲覧できます。
 この閲覧の請求は、遺言者が自ら出頭して行うことが必要です。

 

(2)遺言者の死亡後

 ①遺言書保管事実証明書の交付請求

  ・請求者:誰でも

  ・内容:自分が相続人等に該当する遺言書が保管されているか調べることができる

  ・手続者:請求者本人が手続を行うことが必要。ただし法定代理人は可。

 

 ②遺言書情報証明書の交付請求

  ・請求者:遺言者の相続人等 

  ・内容:遺言書の画像情報など、遺言書に関する情報として保管されている事項を証明した書面の交付を請求できる

  ・手続者:請求者本人が手続を行うことが必要。ただし法定代理人は可。

 

 ③遺言書の閲覧や遺言書に関する情報の閲覧

  ・請求者・手続者について②に同じ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、遺言者の死亡後も、相続人等が自筆証書遺言の有無を調べるのが容易になりました
また、遺言者は保管申請の際に、死亡時に、自らが指定する者(限定あり)に対して、遺言書を保管していることを通知するよう、申し出ることができるという制度も用意されています。
この制度を利用すれば、遺言書の発見はより容易になるでしょう。


また、遺言書保管所に保管されている遺言書については検認が不要とされていますので、その点でのメリットもあるでしょう。

 

公正証書遺言には及ばないと思いますが、それでも、以前の自筆証書遺言に比べれば、メリットの大きい制度になったのではないでしょうか。
公正証書まで作る気はないという方でも、この自筆証書遺言保管制度は検討に値すると思います。

相続法改正について学んでみよう②~自筆証書遺言が作成しやすくなりました

Q. 自筆証書遺言を作ろうと思っています。法律が改正され、作成しやすくなったと聞いたのですが、具体的に何が変わったのでしょうか?

 

A. 以前、「公正証書遺言のメリット」というFAQ(こちらを参照)でもお話しした新制度、自筆証書遺言保管制度。
今日はこの制度に関連して、自筆証書遺言の方式が緩和されたことについてご説明します。


改正前民法では、自筆証書遺言は、財産目録も含め、全てを自書しなければなりませんでした。財産が多数ある場合でも全てを手書きせねばならず、大変面倒でした。
そこで、自筆証書遺言をより使いやすいものとするため、新しい民法では、自筆証書遺言に遺産や遺贈の対象となる財産の目録を添付する場合、その目録は自書しなくても良いことになりました。(ただし、目録を訂正等する場合は自書や押印が必要な部分があります。)


しかし、このように手書きでなくても良いこととなると、偽造のおそれも高まります。
そこで、偽造等を少しでも防止するため、自書でない財産目録を添付する場合には、その目録の毎葉に署名押印が必要となりました(目録の記載が両面にある場合は、両面に署名押印が必要です。)。


ここで1点注意すべきは、この制度が使用できるのは、財産目録が遺言書本文とは別用紙になっている場合に限るという点です。
例えば、本文の中に財産目録が記載されているような場合には、全て自書する必要がありますのでご注意下さい。

また、本文について、その全文・日付・氏名の自書、押印が必要である等の点は従前と変わりません。この点も遺漏のないようにする必要があります。

 

自筆証書遺言保管制度については、近日中に改めて、FAQでご説明したいと思います。

 

離婚の際の財産分与~オーバーローン不動産がある場合

Q. 妻と離婚することになり、財産分与について話し合っています。
財産の中には、私名義のマンションがあります。このマンションは、結婚して5年後に家族の居住用に購入したもので、頭金も夫婦共有財産からで支払い、残額についてローンを組みました。
その後支払を続けてきましたが、現時点でオーバーローンの状態です。このマンションはどのように処理されるのでしょうか?

 

A. これもよくあるご質問の一つです。
特に購入して数年程度の不動産の場合、物件としては中古になり価値が下がるのに対し、ローン額はあまり減っていないため、オーバーローンとなることが多いようです。
ローン名義人としては、共有財産として平等に支払ってほしいと考える方が多く、なかなか解決が難しい問題の一つです。

 

1.オーバーローン不動産しか分与対象財産がない場合


(1)不動産を処分しない場合

[原則]残ローンの支払を求める財産分与は認められないのが原則です。

(理由)財産分与とは、夫婦が協力して築いた財産を分割する制度なので、債務の分与は認められない(できない)と原則的には考えられているためです。
したがって、不動産名義人がそのまま不動産を取得し、通常、名義人とローン債務者は一致することが多いですから、残ローンも支払うのが原則的な形となります。
もっとも、交渉や調停では、相手方が納得しさえすれば、残ローンの一部負担を求める解決も可能です


[例外]
不動産が共有名義で、財産分与により登記を一方の単独名義に移す必要がある場合等は財産分与が認められる場合があると言われます。
もっとも、不動産の名義を変更する場合、ローン契約上、ローン債権者の事前承諾が必要となっていることがあります。この場合、ローン債権者が名義変更に応じないこともあるので注意が必要です。


(2)不動産を処分する場合

不動産を処分すると、債務しか残らない状態になるので、財産分与(この場合、債務の分担)は認められないのが原則です。
もっとも、交渉や調停では、相手方が合意すれば債務の分担も可能なので、事情しだいで検討する余地はあります。

 

2.オーバーローン不動産以外の分与対象財産(正の財産としましょう)がある場合

①財産と残ローンを通算する裁判例、すなわち、全ての積極財産(正の財産)から残ローン額を差し引いた額を分与対象財産とする裁判例と、
②通算しない裁判例、すなわち、オーバーローン不動産は分与の対象とせず、他の財産のみを分与の対象とする裁判例
があり、裁判例は分かれています

個々の事情を検討しつつ解決を導いて行くことになります。

 

交通事故に遭ったとき必要となる資料

Q. 先日、マイカーを運転していたところ、脇見運転の自動車に接触され、事故になりました。
    この事故で私は病院に通院しており、車も修理が必要な状態です。
    今後、賠償請求をすることになりますが、どのような資料が必要になるのでしょうか?

 

A. 交通事故に遭い損害賠償請求をする場合に必要となる資料は極めて多岐にわたります。
今日は、その中でも多くの場合に必要とされる基本的な資料についてご紹介したいと思います。

Ⅰ 基本情報

①加害者の氏名・住所・連絡先や勤務先等
→事故時に確認

②交通事故証明書

 →むち打ち程度の場合、物損事故にされることも多い。怪我がある場合は人身事故にしてもらうことが重要。

③加害車両の車検証

 →できれば事故時にコピーさせてもらうのが望ましい。

④・当事者双方の自賠責保険会社、任意保険会社→事故時に確認

 ・自身の保険会社については担当者、及び弁護士費用特約があるか

⑤事故の証拠(あると良い)

 →ドライブレコーダー等がある場合は保存。事故状況に関する写真等も撮影しておくと良い。

⑥診断書 

 →症状や原因についてなるべく具体的な記載があるのが良い。保険会社の様式で記載することが必要な場合もある。

 死亡の場合には、診断書に加え、死体検案書や死亡診断書等も保管しておく。


(⑦人身事故の場合、実況見分調書や供述調書(場合によるが、あると役に立つことも))

 

Ⅱ 賠償額算定のために必要な情報(人身事故部分)

①入通院の経過   例:●年●月●日~●年●月●日まで ○○病院に入院

            ●年●月●日~●年●月●日まで ××病院に入院

            ●年●月●日~●年●月●日まで ××病院に通院

            (通院の場合、通院した日付もメモしておく)

            ●年●月●日          症状固定

            ●年●月●日~●年●月●日まで ××病院に通院

②入通院中の各種領収書等

 例:・治療費(診察料金や薬代)の請求書や領収書

   ・診療報酬明細書→医療機関が作成するのでもらう

   ・通院にかかった費用の領収書

    (バスや電車の場合、○○駅から○○駅まで××行きのバスを利用といった形で経路をメモしておけば、GoogleMap等で費用

     を計算できる。)

③後遺障害診断書

 →症状固定となった時に医師に記入してもらう。保険会社に様式がある。

④休業損害証明書→事業主に記載してもらう

⑤給与所得者の場合

 ・前年分の源泉徴収票

 ・給与明細(事故前のものも保管) 等

⑥事業所得者の場合

 ・確定申告書の控えと添付書類

 ・納税証明書

 ・課税証明書 等

⑦付添看護が必要だった場合、付添看護料の立証書類

 ・付添看護が必要であることが分かる資料(医師の指示がある場合それが分かる資料等)

 ・付添に要した費用が分かる資料(例えば家政婦料等)

  ※近親者等が付き添った場合は、その期間や日にち、仕事を休んだ場合はそれが分かる書類や収入の分かる書類等

⑧その他事案に応じて必要となる資料あり

 

 

Ⅲ 賠償額算定のために必要な情報(物損事故部分)

①被害物の写真

②被害物の価格が分かるもの

 →購入時期や購入時のレシート等があると良い。なければ現在の市場価値などから概算できることもある。

③修理費用等の見積書や領収書

④代車が必要不可欠な場合、代車使用料の分かる書類

 ※代車が必要不可欠か、代車のランクの程度、代車期間等に注意。

  安易に代車を使用すると代車料金が認められないこともある。

⑤その他事故処理などで必要になった雑費の分かる資料(車両のレッカー代等)

⑥その他事案に応じて必要となる資料あり 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


以上、主な必要書類を列挙してみました。被害者としては、これらの資料を可能な限り集めて保管しておくことになります。
また、それぞれの欄でも記載しましたが、事案しだいで、これ以外にも資料が必要になることがありますので、詳細は弁護士にご相談頂ければと思います。

上に列挙した資料だけでもうんざりするという方が多いかと思いますが、関係資料をもらうこと、捨てないことを意識すれば、そんなに難しくはありません。
必要以上に思い詰めずに治療や今後の賠償請求に臨んで頂ければと思います。

国選弁護人の費用

Q. 刑事事件で逮捕・勾留、その後起訴されました。数日後に判決が出る予定で、何らかの刑が言い渡されると思います。
    判決までの間、被疑者国選弁護士、被告人国選弁護士を利用していたのですが、その費用は支払わなければならないのでしょうか?

 

A. この問題については、刑の言い渡しがされた時、されない時、検察官が上訴した時等々、事案によって規定が異なります。
今回は、最も多いのではないかと思われる、判決で刑が言い渡され、そのまま誰も上訴しなかった場合を想定して、ご説明したいと思います。


法律には、以下のような規定があります。

刑事訴訟法第181条1項

「刑の言渡をしたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。但し、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときは、この限りでない。」

刑事訴訟法第185条

「裁判によって訴訟手続が終了する場合において、被告人に訴訟費用を負担させるときは、職権でその裁判をしなければならない。この裁判に対しては、本案の裁判について上訴があったときに限り、不服を申し立てることができる。」

 

 

 

 

 

 

 

国選弁護人の費用は、ここにいう「訴訟費用」に当たるとされています(刑事訴訟費用等に関する法律第2条3号)。

 

つまり、国選弁護人の費用について言うと、以下のようになるわけです。

裁判で訴訟手続が終了し、刑の言渡をする場合には

・原則:被告人に費用を一部でも負担させるのが原則

・例外:ただし、被告人が貧困のため訴訟費用を納付できないことが明らかな時は費用を負担させなくても良い

費用を一部でも負担させる場合には、その旨の裁判がなされる

 

 

 

 

 

したがって、費用を負担させる旨の裁判がなければ、費用の負担もないこととなります。

 

性格の不一致による離婚について

Q. 夫と離婚を考えています。夫とは価値観が全く違い、ついていけません。最近では家庭での一挙手一投足にイライラします。
    早く離婚したいのですが、夫は離婚に応じるつもりはないと言います。
    このようないわゆる性格の不一致による離婚は難しいと聞いたのですが、本当ですか?

 

A. 離婚関係のご相談で離婚を希望される理由を伺うと、いわゆる「性格の不一致」が圧倒的多数を占めます。価値観が違うとか、ギャンブルや借金をするわけではないがお金に対する考え方が違う等がこれに当たります。


まず前提として、離婚するかどうかに争いがあり裁判になった場合、原則として、離婚事由がなければ離婚は認められません
この離婚事由は法律で以下のように定められています(民法770条)。

①配偶者に不貞行為があったとき(いわゆる不倫のこと)

②配偶者から悪意で遺棄されたとき

③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

※①~④のいずれかに該当する場合でも、裁判所が婚姻の継続を相当と認めるときには、離婚は認められません。

 

 

 

 

 

 

さて、「性格の不一致」は①~④には当てはまりません。
そのため、⑤に該当すると主張する必要がありますが、これは、婚姻関係が破綻し、修復の見込みがないという程度に至っている必要があると言われ、単に性格の不一致や、価値観が合わないというだけでは認められにくいと言われています。


では、絶対に離婚ができないのかと言うと、そうでもありません。この⑤は、各種の事情の総合判断なので、他の事情次第で、離婚が認められることもあるのです。
例えば、別居が続いている時。別居期間や他の各種事情にもよりますが、夫婦の共同生活を修復するのは困難と考えられ、離婚が認められることがあります。
その他にも、客観的に見て共同生活の修復が困難思えるような夫婦間の事情を主張していくことが重要です。


また、仮に、そのような事情が少なく、別居期間も短い場合でも、離婚交渉・調停・裁判と進めていると、これまでかたくなだった相手方が離婚に応じることもあります
弁護士を付けたのを知り本気だと分かったので諦めがつきましたという方や、長期間にわたり離婚の意思が変わらないのを見て離婚に応じる気になったという方も。


決して離婚を奨励するわけではありませんが、それだけ離婚の意思が強いのであれば、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

相続法改正について学んでみよう①~遺産分割前の預貯金の引き出し

Q. 父が亡くなったのですが、100万円ほど借金があったようで、督促状が届きました。
    支払わないと不動産を差し押さえると言われるので、何とか父の遺産である預金から支払いたいと思っています。
    現在、遺産分割で揉めており、相続人の合意で引き出すことは難しい状況です。
  相続法が改正され、預金の引き出しができるようになったと聞いたので
、詳しく教えて下さい。

 

A. 相続法の改正により、相続人全員の合意がない場合でも、遺産分割の成立前に、相続人の一人が、一定範囲内で預貯金の払い戻しを受けられるようになりました。裁判所の判断も必要ありません。今回は、この制度についてご説明します。


新しい制度により、各相続人は、遺産に属する預貯金のうち、相続開始時の残額の1/3に、その相続人の法定相続分を乗じた額について、単独で引き出せることとなりました。
これは、個々の預貯金ごとに判断されます。例を見てみましょう。

例1:父が亡くなり、相続人は子ども二人(AB)。父の遺産のうち預貯金は、X銀行に300万円、Y銀行に180万円であった。
   新しい制度により、Aが引き出せるのはいくらか?


解答X銀行から50万円(=300万円×1/3×Aの法定相続分1/2)

   Y銀行から30万円(=180万円×1/3×Aの法定相続分1/2)

   
   ※合計すると80万円だからといって、X銀行だけから80万円引き出すことはできません。

 

 

 

 

 

 

 


また、本制度では、1つの金融機関から引き出せる額の上限は150万円と決められました。

例2:父が亡くなり、相続人は子ども二人(AB)。父の遺産のうち預貯金は、X銀行の普通預金が420万円、定期預金(満期は来ている)が600万円、Y銀行の普通預金が180万円であった。新しい制度により、Aが引き出せるのはいくらか?

 

解答X銀行から150万円
   Y銀行から30万円

 

解説:(X銀行について)

    ・普通預金:ここまでご説明してきたように計算すると、420万円×1/3×1/2=70万円となります。

    ・定期預金:同じく計算すると、600万円×1/3×1/2=100万円となります。

    ・単純合計額:70万円+100万円=170万円となります。

    ・引き出し可能額:上記の単純合計額は、先程述べた1つの金融機関から引き出せる上限額である150万円を超えています。

             したがって、X銀行から引き出せるのはこの上限額150万円となります

   (Y銀行について)

     例1でご説明したとおり、180万円×1/3×Aの法定相続分1/2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この事前に引き出された預貯金は、原則として、後に行われる遺産分割で清算することになります。(具体的には難しい話になりますので、弁護士にご相談下さい。)


なお、この制度は、原則として、相続人が金融機関に資料を提出し、金融機関でその相続人に引き出しをする権限があるか等の判断をすることが想定されているようです(ATM等での引出は想定されていないようです)。
また、ある預貯金が遺贈の対象になっていたり、相続人の一人又は数人に相続させる旨の遺言の対象となっている等の場合には、原則として、その預貯金には本制度が適用されませんのでご注意下さい

 

こうして、相続法改正により、一定範囲内の預貯金について相続人が単独で引き出すことができるようになりました。
もっとも、この引出には上述のような額の制限があります。この額を超えて資金が必要な場合には、裁判所に「仮分割の仮処分」という申立を行うことになります。

 

不倫慰謝料請求の流れ

Q. 夫が不倫をしていることが分かりました。相手の女性に慰謝料を請求したいのですが、手続はどのように進むのでしょうか?


A.
不倫慰謝料請求(今回は相手女性に対する請求を想定してご説明します。)を弁護士に依頼された場合、多くの場合、以下のような流れで進みます。


①資料収集

慰謝料請求をする前提として、まず、請求のための資料を収集する必要があります。
最低限、以下のような資料・情報は集めておく方が良いでしょう。

・不倫の事実が分かる証拠

→不倫と認定されるためには、肉体関係を持っていることが必要となります。したがって、2人が肉体関係を持ったことが分かる証拠が必要です。
ときに、相手方が自ら不倫の事実を認めることもありますが、相手方が不倫を認めない場合でも対応できるよう、資料は集めておいた方が良いでしょう。
肉体関係の頻度や不倫の期間等が分かる証拠も集めておくと良いでしょう。

・相手方の氏名や連絡先・住所等

→相手方の名前や連絡先・住所など、何らかの形でコンタクトが取れることも必要です。


②交渉

資料が収集できたら、いよいよ慰謝料請求について示談交渉を行います。
まずは、相手方の住所に弁護士から書面を送付するのが通常です。弁護士が付いたことを知らせるとともに、慰謝料を支払って下さいと通知する内容が多いでしょう。
例外的に、住所が不明の場合などは、相手方の電話番号に直接連絡するといったこともあります。


③訴訟(裁判)

示談交渉を行っても、相手方が不倫の事実を認めないとか、不倫の事実は認めたものの慰謝料額について争いがある場合などは、裁判を起こすことがほとんどです。
裁判所に、不倫をしていた事実、それによって被った損害等を主張し、不倫の事実の存否や慰謝料額等について判断を求めます。裁判途中で和解という形で結論が付くこともあれば、判決という形で裁判官の判断が下されることもあります。
判決に納得できない場合は控訴・上告等の手続をすることになります。


④執行

相手方の支払額が確定したが、約束の期限までに支払わない場合は、強制執行という手続をすることになります(※強制執行の前に裁判等が必要となる場合もあります。)。
ごく簡単に言えば、相手方の資産(預貯金や不動産など)から、約束した支払額を強制的に回収する手続です。場合によって給与などを差し押さえることもあります。
もっとも、相手方の資力次第では、強制執行しようにも差し押さえる財産がなかったり、強制執行をしてみたが空振りに終わったりということもあります。このように相手方の資力が乏しい場合等は、なるべく任意に支払を受けられるよう、分割払いにするといった工夫も検討することになります。

当番弁護士ってなに?

Q. 当番弁護士という言葉を聞いたのですが、どんなことをする弁護士ですか?

 

A. 「当番弁護士」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
テレビドラマで刑事事件を担当する弁護士は見たことがあっても、「当番弁護士」という言葉は聞きなじみがないかもしれません。


⑴当番弁護士の概要

「当番弁護士」とは、逮捕された被疑者等から要請があった場合に、最初に接見に行く弁護士のことです(すでに知っている弁護士がいて、その弁護士を呼んだ場合は別です)。
逮捕された後最初の1回だけ無料で呼ぶことができます。
日にちごとに担当の弁護士が決まっており、当番制となっているので、「当番弁護士」と呼ぶのだと思います。

⑵当番弁護士の任務

当番弁護士は、連絡を受けると、警察署などに行き、逮捕された被疑者と接見します。
そこで、黙秘権などの権利や今後の手続の流れ、取り調べを受けるにあたり注意すべき事項などを説明します。
家族に連絡をとってほしいといった希望がある場合は、事案によりますが、連絡をとる場合もあります。

 

特に初めて逮捕された場合などは、憔悴している方も多く、初めての取り調べにどう対応してよいのか困惑・混乱している方も多くいらっしゃいます。弁護士を呼んで、気持ちを落ち着け、自分の状況や認められた権利等を理解して、取り調べ等に臨むことが重要です。弁護士とは立会人なく接見することができますから、まずは落ち着いて話をすることが大事です。

親権の決定における考慮要素

Q. 現在、離婚協議中ですが、相手方が子どもの親権は譲らないと言っています。裁判になった場合、私は親権を取得できるでしょうか?親権の決定の際、どのような事項が考慮されるのでしょうか?

 

A. 親権争いは、離婚事件でも最も多い紛争類型の一つです。財産分与のようなお金の話と異なり、親権を取得できる/できないの二者択一になってしまうため、争いも熾烈になりがちです。ご相談でも、絶対に親権はほしいのですが勝てるでしょうか?といったご質問を良く受けます。
そこで、今日は、親権の決定に際して裁判所で考慮される事項について、ご説明したいと思います。


親権は、どちらを親権者にするのが子の福祉にかなうかという基準で決定されます。
これを判断するための主な考慮要素が以下のとおりです。


①これまでの子どもの監護状況

両親それぞれが、これまで、子どもの養育にどのように関わってきたかは重視される要素の一つです。

仕事をしている夫と専業主婦の妻のような場合、どうしても妻が子育てをメインでやりがちですが、その場合でも、父親として積極的に子育てに関わってきた事情を主張するのが望ましいでしょう。

②親権決定後の子どもの生活状況

()従来の環境をなるべく変えないのが望ましいと言われます。例えば、居住地域や学校など、子どもが慣れ親しんだ環境は継続させてやるのが望ましいとされます。

()離婚後、子どもが安定した生活を送れるかも考慮要素になります。具体的には、

親の監護能力

親族から援助を受けられる場合にはその事情

親の監護に対する意欲

子どもが精神的に安定した生活を送れるか

居住・教育環境はどうか

経済的な環境はどうか

などが考慮されます。

③子どもの年齢・意思

子どもの意思については、特に高年齢の子どもについては考慮されます。もっとも、幼い場合でも、確固たる意思が見える場合には考慮されることがあるように感じます。

④親の子どもに対する愛情の度合い

⑤面会交流に消極的でないか

離婚後、非親権者と子どもとの面会交流に消極的であるという事情はマイナス事情になることが多いです。

⑥兄弟姉妹不分離の原則

兄弟姉妹はなるべく分離しないのが良いとされます。


以上が主な考慮要素になります。
当事者としては、何よりもまず子どもの利益を考え、上で述べたような事情を一つでも多く積み重ねて、いかに子の福祉にかなうかを主張していくことになります。

公正証書遺言のメリット

Q. 遺言書を作るなら公正証書遺言が良いと聞いたのですが、どんなメリットがあるのですか?

 

A. 公正証書遺言とは、公証人に依頼し、公正証書として作成してもらう遺言のことです。
費用面の問題や事案にもよりますが、一般的には、遺言を作成する場合、公正証書遺言にすることをお薦めしています。
公正証書遺言には、以下のようなメリットがあるためです。


①遺言無効などの主張がされる確率が比較的低い

一応、公証人が遺言者に直接確認をした上で作成されるため、遺言書が真意によるものでない等の主張がされにくい傾向にあると感じます。本人確認も行われますので、本人が作成したものかが争われることは少ないのではないでしょうか。
もっとも、公正証書とはいえ、その遺言が100%有効であることを担保するものではないので、遺言の有効性について争う余地はありますし、実際争われることもありますが、確率としては低いように感じます。


②公証人は法律に関する専門的な知識を有しているため、形式面だけでなく、内容面でも適正な遺言ができることが多い


③公証人が原本を保管しているので、偽造・変造や破棄・隠匿のおそれがない(もちろん紛失する心配もない) (※新しくできた自筆証書遺言保管制度をのぞく)


④相続人が遺言書を探すのが容易

公正証書遺言の場合、公証役場に依頼し、遺言検索システムで検索してもらうことができます。自筆遺言のように、押し入れにあるのか、神棚にあるのか・・・と探す必要はありません。

もっとも、新しくできた自筆証書遺言保管制度では、相続人などが遺言書保管所(保管所として指定されている法務局のこと)に「遺言書保管事実証明書」という書類の交付を請求できます。これにより遺言書を検索することができるのです。したがって、この制度を利用していれば、遺言探しも容易になると思われます。


⑤検認などの手続が不要

自筆証書遺言の場合、まず、家庭裁判所において「検認」という手続を経ることが必要です(新しくできた自筆証書遺言保管制度を除く)。
公正証書遺言では検認が不要のため、面倒な手続をしなくてすみます。

 

公正証書遺言には以上のようなメリットがあります。

なお、ここまでにも何度か出てきましたが、今般新しく、自筆証書遺言保管制度という制度ができました。これにより、上記のメリットのうち③~⑤はカバーすることができると思われます。しかし、①、②については、なおカバーできません(①のうち本人確認については、自筆証書遺言保管制度でも、保管申請の際に本人確認が行われるようです。)。
事案にもよりますが、一般的に公正証書遺言のメリットが大きい状況は変わっていないと言えるでしょう。

 

民法改正について学んでみよう①~消滅時効期間に関する規律の変更~

Q. 民法が改正され、消滅時効の期間が変わったと聞きました。具体的にどう変わったのですか?


A.
民法に規定された消滅時効期間の変更、特に今回は、メインとなる、債権の消滅時効期間の変更に焦点を当て、ご説明します。

改正前民法では、職業別の短期消滅時効が定められていました。商法でも、商行為によって生じた債権について5年という短期の消滅時効が定められていました。
しかし、このような職業別の短期消滅時効などは、取引が多種多様となり複雑化した現代では、合理性に乏しいと言われていました。
そこで、民法改正により、この短期消滅時効、商事消滅時効が廃止されました。

こうして一律の消滅時効期間を定めることとなったわけですが、原則となる消滅時効期間をあまりに長くすると領収書の保存などの負担が増えてしまいます。かといって権利を行使できるか簡単には分からない債権もあるわけで、一律に短くするのも考え物です。
そこで、民法改正により、原則的な債権の消滅時効期間は、以下のいずれかに該当する時に変更となりました。

 ①権利を行使できることを知った時から5年間行使しない時 
 ②権利を行使できる時から10年間行使しないとき


ただし、この規定には、例外があります。


例外1:不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間

 ①被害者などが損害及び加害者を知った時から3年 
 ②不法行為の時から20年


例外2:人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効期間

 ①権利を行使できることを知った時から5年
  (不法行為の場合は被害者などが損害及び加害者を知った時から5年)
 
②権利を行使できる時から20年 (不法行為の場合は不法行為の時から20年)

※不法行為により生命または身体を侵害した場合については、例外1のさらに例外を定めた規定ということになります。


外3:定期金債権の消滅時効期間

※定期金債権とは、定期的に金銭等の給付を受けることを目的とする債権を言います。毎月支払を受ける養育費などを想定すると分かりやすく、毎月の養育費債権を発生させる基礎となる大本の権利が定期金債権です。

 ①債権者が、定期金債権から生じる金銭等の給付を目的とする各債権を行使できることを知った時から10年
 
②①記載の各債権を行使できる時から20年


例外4:判決で確定した権利の消滅時効

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものにより確定した権利については、時効期間は10年(確定時に弁済金の到来していない債権は除く)

 

事業者の方は、商事消滅時効の5年に慣れている方が多いと思います。
しかし、事業者でない方は10年までなら大丈夫と考えていた方も多いのでは?
今後は原則5年と短くなりますのでご注意ください!

遺産分割の流れ

Q. 遺産分割をめぐる争いを弁護士に依頼した場合、どのような流れで進むのですか?


A.
相続争いは、ご相談でもよくある事件類型の一つです。
このような遺産分割をめぐる争いを弁護士に依頼した場合、どのような流れで進むのか簡単に解説します。

①交渉(裁判外での交渉)

弁護士に依頼された場合、すぐに裁判にするのではなく、まずは、相手方(遺産分割をめぐり争いになっている方)と裁判外で交渉を行うのが一般的です。
裁判となると、申立費用など追加の費用もかかりますし、裁判期日も月1回のことが多く、終了までにかなりの時間を要することもしばしば。
ですので、まずは、交渉で話がまとまらないか、トライしてみることが多いです。

②調停

交渉をしばらく続けても、当事者どうしでは話がまとまらない場合、家庭裁判所に申立をします。まずは、「調停」の申立(申し立てられることもあります。)をすることがほとんどです。
調停も、交渉と同じ話合いの手続です。したがって、当事者の合意がなければ調停成立とはなりません。
一方、交渉と異なるのは、調停委員という第三者が間に入る点です。調停委員は、この後ご説明する「審判」を見据えた話をしてくれることが多いので、話合いがうまくまとまることもあります(もちろん、結局は話合いですから、うまく行かないことも多々ありますが。)。

③審判

調停でも話がまとまらない場合、家庭裁判所における「審判」になります。
これは、当事者の主張を聞いた上で裁判官が結論を出す手続です。当事者の合意や納得が必要ない点で交渉や調停と異なります。交渉・調停を経ていることが多いため、かなりの時間がかかっていることが多いのですが、一定の結論が出されるメリットはあります。
審判に対して納得がいかない場合は、高等裁判所に即時抗告をすることになります。

※このほか、いわゆる使途不明金が争いになっている場合などは、地方裁判所などで訴訟を行うこともあります。


以上が、遺産分割の簡単な流れになります。

相続争いになると、これまで行き来のあった兄弟姉妹が対立し、思いもよらない言葉を浴びせられたり、「そんな昔のことを持ち出すのか」と思われるような話が出てきたりと、当事者はかなりのストレスを感じてしまいます。
裁判沙汰なんて恥ずかしいと思わずに、まずは弁護士にご相談されてはいかがでしょうか。

 

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