相続法改正について学んでみよう⑦~持戻し免除の意思表示の推定②

Q. 先日、40年連れ添った夫が亡くなりました。葬儀も一段落したばかりなのですが、息子から遺産を分けろと催促を受けています。

遺産分割については、夫が亡くなった時に残っていた遺産を、法定相続分に従って分けるつもりでいます。相続人は私と息子の二人だけなので、亡くなった時の財産を半々にするつもりでした。

ところが、息子は、私が夫から、昨年(令和2年)の5月に、住んでいる家の生前贈与を受けていたことを理由に、自分(息子)が多めに遺産をもらうべきだと主張しています。

息子に多く遺産を渡さなければならないのでしょうか?最近、相続法も改正されたと聞いたので、新しい相続法での定めについて教えて下さい。

 

 

A. 今回のQでは、生前贈与を受けたのも令和2年の5月ということで、改正後の相続法が適用されます。
改正後の相続法の下では、特段の事情のない限り、ご主人が死亡時に有していた財産を、法定相続分に従って分割すれば良く、息子さんに多く遺産を渡す必要はないと思われます。

 

 

前回は、相続人が、被相続人から遺贈や特別受益に当たる贈与を受けた場合の基本的なルールについてご説明しました。
今回は、このルールに関連した法改正についてご説明します。

 

まずは、法改正により新設された条文をご紹介しましょう。

民法第903条4項

 

婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

 

(筆者注:「第一項の規定」とは、持戻し計算について定めた規定のこと)

(筆者注:なお、この規定は、相続法改正で新しくできた制度である配偶者居住権の遺贈にも準用されています。配偶者居住権については、別の機会にご説明できればと思います。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回ご説明したとおり、相続人が被相続人から遺贈や特別受益に当たる贈与を受けていた時、その財産は持戻し計算をするのが原則です。
例外的に、持戻し免除の意思表示があった場合には、持戻しがされず、結果的に財産を多く受け取れるという制度になっており、この基本的なルールは相続法改正後も変わっていません。(前回の記事はこちらを参照)

 

では、相続法改正で何が変わったのか?

上の枠囲みの条文が新設され、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が亡くなった場合、遺された他方配偶者に対して、居住用不動産を遺贈あるいは贈与していた時には、その居住用不動産について、持戻し免除の意思表示をしていたと、法律上推定されることになったのです。

 

改正前は、原則持戻し計算、例外的に「持戻し免除の意思表示」があれば持戻し免除という規定でした。
相続法改正では、この基本的なルールは維持しつつ、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が亡くなった場合、遺された他方配偶者に対して、居住用不動産を遺贈あるいは贈与していた時には、この原則と例外が逆転し、原則として持戻し計算をしない(持戻し免除)こととなったわけです。

 通常、このようなケースで居住用不動産の贈与等をする場合、自分亡き後も生活に困らないようにという気持ち(他の遺産に加えて、住む場所に困らないよう居住用不動産を渡す意味)で、贈与等を行っていることがほとんどだろうという考えが背景にあるようです。

 

したがって、今回のQでも、原則的には、持戻し免除の意思表示があったものと推定され、死亡時の財産を法定相続分に従って分ければ良いことになると思われます。

 

ただし、この規定はあくまで「推定」規定です。
したがって、被相続人がこれに反する意思表示をすることは可能ですし、他の相続人等が、これに反する事実を証明すれば、この推定は破られます。
今回のQ&AAで「特段の事情のない限り」と書いたのもそういった場合に配慮してのことです。

 

以上が、持戻し免除の意思表示の推定に関する相続法改正の概要です。

特別受益や寄与分は、相続(遺産分割)で揉める最大の原因と言っても過言ではありません。
今回の法改正に限らず、お困りのことがあれば、遠慮無く弁護士にご相談頂ければと思います。

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