相続法改正について学んでみよう⑥~持戻し免除の意思表示の推定①

Q. 先日、40年連れ添った夫が亡くなりました。葬儀も一段落したばかりなのですが、息子から遺産を分けろと催促を受けています。

遺産分割については、夫が亡くなった時に残っていた遺産を、法定相続分に従って分けるつもりでいます。相続人は私と息子の二人だけなので、亡くなった時の財産を半々にするつもりでした。

ところが、息子は、私が夫から、昨年(令和2年)の5月に、住んでいる家の生前贈与を受けていたことを理由に、自分(息子)が多めに遺産をもらうべきだと主張しています。

息子に多く遺産を渡さなければならないのでしょうか?最近、相続法も改正されたと聞いたので、新しい相続法での定めについて教えて下さい。

 

 

A. 今回のQでは、生前贈与を受けたのが令和2年の5月ということで、改正後の相続法が適用されます。
改正後の相続法の下では、特段の事情のない限り、ご主人が死亡時に有していた財産を、法定相続分に従って分割すれば良く、息子さんに多く遺産を渡す必要はないと思われます。

 

 

生前贈与や遺贈があった場合に、その贈与や遺贈を、遺産分割でどう扱うか? この点に関する法改正が、今回のテーマです。

法改正について理解するためには、前提として、相続人(今回のQでは妻)が、被相続人(今回のQでは夫)から、遺贈や、特別受益に当たる贈与を受けた場合の基本的なルールについて理解しておく必要があります

そこで、今日は、その基本的なルールについてご説明し、それを前提に、次回、法改正の内容についてご説明をしたいと思います。

 

基本的なルールについて理解するために、簡単な事例を考えてみましょう。

<事例>

被相続人Xが亡くなり、相続人は妻A、長男B、長女Cの3人です。

Xの死亡時の財産は3000万円の預貯金だけでしたが、生前、Cに営業資金として1000万円の贈与をしていました。

この場合、遺産分割における、ACそれぞれの具体的な取り分はいくらになるでしょうか?

(ただし、Cに対する1000万円の贈与が特別受益に当たることを前提とします。)

 

<回答>

原則として、A:2000万円、B:1000万円、C:0円

ただし、例外があり得る。

 

<解説>

Xの死亡時の財産は3000万円の預貯金だけでした。

しかし、相続人が、被相続人から遺贈や特別受益に当たる贈与を受けている場合には、原則として、その遺贈や贈与を受けた財産の価額を、死亡時の財産の価額に加算して、各自の取り分を計算することとされています。

これを、法律用語で、「持戻し計算」と言います。

 

今回の<事例>では、3000万円の預貯金に、Cが贈与を受けていた1000万円を加えた4000万円に、法定相続分をかけることで、各自の相続分が決まることになります。

妻A:(3000万円+1000万円)×1/2=2000万円

 

長男B:(3000万円+1000万円)×1/4=1000万円

 

長女Cについては、すでに1000万円を贈与で受け取っていますので、算出された相続分から1000万円を差し引くことになります。

長女C:(3000万円+1000万円)×1/4-1000万円=0円

 

 

ただし、このルールには例外があります。

被相続人が、贈与や遺贈について、持戻し計算をする必要はないという意思表示をしていた時には、その意思に従い、持戻し計算はしないこととされています。

これを、法律用語で、「持戻し免除の意思表示」と言います。

簡単に言えば、財産を特に多く受け取らせる意思で贈与や遺贈をしていたなら、その意思に従って、持戻し計算はしない(その結果、受け取る財産は多くなる)ということです。

 

仮にそういった意思表示があった場合、各自の取り分がどのように変化するか見てみましょう。

A:3000万円×1/2=1500万円

 

長男B:3000万円×1/4=750万円

 

長女C:3000万円×1/4=750万円(すでに受け取っている1000万円を加えると1750万円)

 

長女Cは、結果的に、財産を多く受け取れることになるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が、相続人が、被相続人から遺贈や特別受益に当たる贈与を受けていた場合の基本的なルールです。

これを前提に、次回、改正点についてご説明します。

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